logo

グレート・インディアン・キッチン

監督:ジョー・ベービ
脚本:ジョー・ベービ
撮影:サール・K・トーマス
編集:フランシーズ・ルイス
音響:トーニ・バーブ
音楽:スーラジ・S・クルップ、マチュース・プリッカン
出演:ニミシャ・サジャヤン、スラージ・ヴェニャーラムード、T・スレーシュ・バーブ、アジタ・V・M、ラーマデーヴィ、カバニ

2021年/インド
日本公開日:2022年1月21日
カラー/マラヤーラム語/100分
字幕:
配給:SPACEBOX
© Mankind Cinemas, Symmetry Cinemas, Cinema Cooks
2021年 メルボルン・インド映画祭
 長編作品部門 映画における平等賞
 女優賞(ニミシャ・サジャヤン)
2021年 シュトゥットガルト・インド映画祭 作品賞
2021年 ケーララ州映画批評家連盟賞 作品賞
2021年 ケーララ州映画賞 作品賞
 脚本賞(ジョー・ベービ)/音響賞(トーニ・バーブ)
2021年 UKアジア映画祭 Making Waves Digitally 賞

poster


グレート・インディアン・キッチン
(The Great Indian Kitchen)

story

 インド南西部のケーララ州、カリカット。古典舞踊を踊っている女性たちの一人(ニミシャ・サジャヤン)が、自宅でお見合いをする。彼女は中東育ちでモダンな生活様式に馴染んでいるが、相手の男(スーラジ・ヴェンジャラモードゥ)は由緒ある家柄で、伝統的な邸宅で両親と暮らしている。二人は伝統的な結婚式を挙げ、嫁となった彼女は温和な姑(アジタ・V・M)に導かれて家事のあれこれを学んでいく。

 舅(T・スレーシュ・バーブ)は頑固な伝統主義者で、調味料は手挽きのチャトニを好み、朝は焼きたてのチャパティが出された。カレーやタピオカ・ビリヤニ。女は男たちの後で食事し、テーブルは食べこぼしで汚れている。片付け、掃除、洗濯、朝は夫の歯ブラシの用意まで。姑は黙々と日課をこなし、嫁を気遣ってくれた。

 そんなある日、妊娠している夫の妹の面倒をみるため、姑が家を離れてしまう。妻の真の試練が始まった。張り切って家事を始めたものの、慣れないことばかり。ミキサーや炊飯器を使うと舅が嫌がるし、洗濯も手洗いを要求。教師をしている夫は弁当を作って欲しいと頼んできた。

 姑の助言で、外で習い事をしたいと夫に伝えるが曖昧な返事。舅からはやんわりと却下される。唯一、生理の数日間だけは家事労働から解放され、通いのヘルパー(カバニ)が手伝ってくれた。だが、口喧しい叔母(ラーマデーヴィ)がやって来て、生理中のあれこれを指導する。その期間は穢れた存在として、狭い部屋に隔離されるのだ。

 シンクの排水口が詰まり、水漏れがしていた。夫に修理屋を頼んでもらうが、なかなかやって来ない。雑巾を敷いてバケツを置き、生ゴミと共に処理するが悪臭が手について離れなかった。今では夜の営みも苦痛でしかない。夫は何事にも身勝手だった。夫が生ゴミに思えてくる。妻はスマホでSNSを眺め、次第に怒りを募らせていった…。

アジコのおすすめポイント:

リベラルな家庭で育った女性が伝統的な因習が残る家庭に入り悪戦苦闘。様々な差別や偏見を受け、ついには爆発する物語です。美味しいインド料理の作り方…ではなく、インド女性にとって台所が実は牢獄になっている、という皮肉を込めたタイトルになっています。監督はキリスト教徒の家に生まれたジョー・ベービ。ヒンドゥー教女性と恋愛結婚をし、妻の妊娠中に台所仕事を全部引き受けた経験が、本作の元になっています。そこから女性たちと議論を重ね、家事労働のフラストレーションと生理中の女性隔離(ヒンドゥー教の家庭のみ)や穢れの問題を盛り込んで映画にしました。映画祭に出品するつもりで作られた本作ですが、宗教問題を盛り込んだため、上映はおろか、テレビもネット配信大手にも拒絶されてしまいます。唯一、2020年に開設したばかりのマラヤーラム語専門の小さな会社で、昨年1月に封切配信され、怒涛の反響が起こったのでした。その後は女性たちの自主プロモーションにより、2ヶ月遅れで配信大手も参入。全インド女性に伝わり、大きな共感を得ています。アジコはてっきりインドの女性は強いと思っていたのですが、こういう側面も残っているのですね。びっくりです。


p2p3

p4p5

▼公式サイト ▼予告編