story
タイ。男は夜の繁華街へ遊びに出た時に拉致され、薬で眠らされる。目覚めると船の上にいた。そのまま、奴隷として働かされ、帰れなくなった。過酷な労働に耐えられず、海に飛び込んで脱出。どこかの島に流れ着き、ジャングルで暮らしていたが村人に迎えられる。そして、タイから来た人に助けられた。
彼を助けたのがパティマ・タンプチャヤクルだ。彼女は夫とLPN(労働権利推進ネットワーク)を創設し、幼い娘を育てながら活動している。これまでに、多くの逃げ出した奴隷たちを救出。2014年には、インドネシアの離島から約2000人の奴隷や、座礁した船の船員を救出して注目された。
トゥン・リンはミャンマーで生まれ、14歳の時に誘拐された。海の奴隷として働かされ、事故で片手の指を4本失くしている。海へ飛び降り、インドネシアのアンボン島に逃れたが、家に帰る手段がなく地元で結婚。パティマに救出され、ミャンマーに帰国することができた。
その後、漁業会社から事故の賠償金を得ることができ、そのお金でミャンマーに家を建てている。しかし通常、訴訟を起こすには同じ船で働いていた仲間の証言が必要で、賠償金をもらうのはかなり難しい。トゥン・リンは彼らを救うため、LPNで逃げてきた男たちの証言を集めている。
パティマたちは撮影クルーを連れて、船でインドネシアへ7日間の奴隷救出の旅に出る。通訳として、ジャーナリストのチュティマ・シダサシアンも同行。アンボン島、ベンジナ島を巡り、密漁の拠点を発見する…。
アジコのおすすめポイント:
ある日突然、誘拐され「海の奴隷」として何年間も船に閉じ込められ、人生を狂わされた男たちと、彼らの救出活動を続けている女性を追った驚くべきドキュメンタリーです。彼らを見つけ出し、帰国の手伝いをしているのは、LPN(労働権利推進ネットワーク)のパティマ・タンプチャヤクル。カメラは彼女のプライベートも映し出し、共に活動する夫や幼い娘との微笑ましいシーンも挿入。強さや厳しさだけでなく家庭人としての姿も紹介しています。そんな彼女に協力し、奴隷撲滅運動のリーダーとして活動するトゥン・リンも彼女に助けられた一人。後半、インドネシアの島々に逃れた奴隷たちを救出する航海は、危険も伴いスリリングです。そして見つかった人々の人生は複雑。帰国できず、現地で家族を持った人も多く、その家族を捨てて帰国するのは容易ではない。人生の選択を迫られます。一方、スマホやSNSのおかげで、映像を公開するだけですぐに親族が見つかる人も。監督は海洋犯罪に焦点を当てている独立系の映像作家シャノン・サービスと撮影を担当したジェフ・ウォルドロン。タイのシーフード産業の背後にある誘拐と強制労働。この問題は欧米を中心に大きく報じられて政府を動かし、法規制などの対策が強化されました。しかし、被害に遭った人々の補償問題は難航しています。シーフード消費大国の私たちも知っておくべき問題。ぜひ、じっくりとご覧ください。
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