story
2019年11月、香港では逃亡犯条例改正反対デモと香港当局の衝突が激化を極めていた。香港屈指の繁華街・尖沙咀にある香港理工大学を警官隊が包囲し、デモ隊と学生は要塞と化したキャンパスで、13日間に及ぶ籠城を余儀なくされた。
警察は放水車、催涙弾を用い、場合によっては実弾も辞さないと警告した上で攻撃した。デモ隊たちは火炎瓶、弓矢等をもって抵抗し、キャンパス内には火の手が上がった。
完全に陸の孤島と化したキャンパスで、デモ隊は「残るか、去るか」の決断を迫られていく。個人情報と引き換えに投降を迫る警察に、暴動罪で逮捕されれば懲役10年を課せられる恐怖と、仲間を裏切る後ろめたさは、デモ隊の心をかき乱していく…。
ロープを使って橋から飛び降り、支援者のバイクに飛び乗って脱出する者。下水道から脱出する者。最後まで大学に留まり戦い続けようとする者。
匿名の監督たちは、デモ隊と共に大学構内に留まり、カメラを回し続けた。デモ隊の顔は、防護マスクやモザイク処理によって隠されているが、カメラはその下にある憔悴や恐怖、葛藤をまざまざと映し出していく。
アジコのおすすめポイント:
これまでに上映された2019年の逃亡犯条例に反対するデモのドキュメンタリー作品の中で、必ず登場したのがこの香港理工大学での籠城戦です。本作は当時、デモに参加したり映像を記録していた複数の監督が集まり、それぞれの映像をつなげて作り上げた特異なドキュメンタリー。報道では見えなかった内側のリアルを写し取っています。結果的に1377名という最多逮捕者を出すことになったこの占拠と、それに続く封鎖。その中で、大学の中に留まっていた人々は、どうしてここに集まったのか。変化する状況の中で、何を思い、どう行動したのか。膠着状態が続く中、大学や高校の先生たちが説得に入ってきます。一緒に出れば拘束はされない。但し、IDは登録されてしまう。未来ある若者たちの選択は様々です。最初こそ、学生運動をやってみました的なのんびりムードもあり、楽観的に構えていた人もいたでしょう。でも、状況は刻々と緊迫度を増していきます。リーダー不在の中、決断するのは自分自身。カメラはそんな個人に寄り添い、当時の混乱を記録しています。香港では上映禁止になったものの、世界の映画祭で注目され数々の賞を受賞。若さゆえ一途で、若さゆえ揺れ動く瞬間を切り取った貴重なドキュメンタリー。ぜひ、お見逃しなく。
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