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世界は僕らに気づかない

世界は僕らに気づかない(Angry son)


監督:飯塚花笑
脚本:飯塚花笑
撮影:角洋介
編集:阿部誠
衣装:村上久美子
音楽:佐藤那美
出演:堀家一希、ガウ、篠原雅史、村山朋果、森下信浩、宮前隆行、田村菜穂、藤田あまね、鈴木咲莉、竹下香、小野孝弘、関幸治、長尾卓磨、岩谷健司

2022年/日本
日本公開日:2023年1月13日
カラー/シネマスコープ/5.1ch/112分
製作:レプロエンタテインメント
配給:Atemo
©「世界は僕らに気づかない」製作委員会
2022年 大阪アジアン映画祭
 コンペティション部門 来るべき才能賞


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story

 群馬県太田市。高校3年生の純悟(堀家一希)は、フィリピンパブで働くフィリピン人の母親レイナ(ガウ)と二人で暮らしている。自由奔放で明るく美しいレイナ。純悟はそんな母親にこっそりカメラを向ける。

 だが、純悟は幼い頃からジャンピーノ=フィリピンハーフという現実を受け入れられず、周囲とも母親ともうまくコミュニケーションが取れずにいた。そろそろ進路を決めなくてはならないが、将来に希望が持てず苛立つばかりだ。

 生活が苦しい中、レイナは国に仕送りをしており、電気が停まるほどだ。父親のことは何も聞かされず、ただ毎月養育費だけが振り込まれていた。純悟に電気代を払えとせきたてられると「ダディーの養育費ある。それ使ったら良くないか?」と、家族なら助け合おうというレイナだが、純悟は「嫌だね」ときっぱり断る。不平・不満が募り、顔を合わせればケンカ口調になってしまう日々だった。

 純悟には優助(篠原雅史)という同級生の恋人がいる。公認の仲で、彼の家でご馳走になることもあった。パートナーシップ制度の話が出ると、優助の妹たちや母親(田村菜穂)は二人の将来に理解を示すが、父親(宮前隆行)の意見は現実的だった。自分との将来について真剣に向き合わない純悟に優助は傷つき、しばらく距離を置きたいと告げる。

 そんなある日、純悟が帰宅するとパンツ1枚の男・森下(森下信浩)がいた。「来月この人と結婚するの。いいな。来月からここに一緒に住むの」とレイナ。人は良さそうだが風采のあがらないおっさんだ。しかも、無職だという。

 いろいろな出来事に追いつめられた純悟は、実の父親を捜そうと決意。母のアルバムから父親と思われる写真を持ち出し、レイナが昔働いていた街のフィリピンパブを訪れる。そして、渡辺(岩谷健司)と出会うのだが…。


アジコのおすすめポイント:

外国人労働者が多い群馬県を背景に、フィリピンハーフ(ジャンピーノと呼ばれるそうです)として生まれた自分の境遇とセクシュアリティのせいで、将来の展望を描けない若者の憤りと焦りを描いたヒューマンドラマです。監督はトランスジェンダーである自身の経験を描いた『僕らの未来』で世界でも注目され、22年に『フタリノセカイ』で長編デビューを飾った飯塚花笑。LGBTQの生きづらさを描いた作品は数多くありますが、本作の主人公と同級生のゲイカップルは家族も公認の仲。多様性の認知に積極的に取組んでいる群馬県が2020年に導入した「ぐんまパートナーシップ宣誓制度」にも触れ、アセクシュアルの女生徒も登場して未来の子育てにまで話が発展するなど、一歩進んだ現代ならではの展開になっています。むしろ、主人公を苦しめているのは、人種差別や親子関係の問題。陽気で明るい母親と鬱々とした息子のぶつかり合いは激しいものの、友達のように対等に物を言い合う関係は面白く、お互いに支え合っているのが伝わってきます。父親探しの旅で出会った人々によって、主人公は自分の周りにある大切な愛に気づき、自分自身と向き合っていけるようになります。タイトルに逆説的に反映されているように、いろいろな意味でたくさんの気づきをもたらしてくれる作品です。

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