story
落ちていたバナナに滑って足を骨折した大学生のナモーナ(バヤルマー・フセルバータル)は、真面目で野暮ったいサロール(バヤルツェツェグ・バヤルジャルガル)に足が治るまでアルバイトの代理を頼みこむ。特に親しいわけではないが、簡単な仕事で高給と言われ、サロールは引き受けることに。連れて行かれたのは、街角のビルの半地下にあるアダルトグッズ・ショップだった。
規則は、店が終わったら売上をオーナーに届けに行くこと。猫の餌も忘れずに。なんとか初日を終えて、オーナーのカティア(エンフトール・オィドブジャムツ)が住む高級フラットへ。彼女は謎の多い人物だったが、生真面目なサロールに興味を持ったようだ。
サロールは両親と幼い弟との4人家族。父(バザルラグチャー)は元ロシア語教師だが、今は母(サラントヤー・ダーガンバト)がスリッパを縫って市場で売り、生計を立てている。二人とも、大の韓国ドラマファンだ。
サロールは親の勧めで原子力工学科に入ったが、ほんとうは絵を描くことが好き。授業中は先生の似顔絵ばかり描いている。BFのトブドルジ(ガンバヤル・ガントグトフ)とは、いつも外でタバコを喫う。スマホばかり見ている彼の夢は、俳優になること。韓流スターに憧れているのだ。
店にはいろんな客がやって来た。大学の先生が来たこともある。サロールも商品説明に慣れ、配達に行くこともあった。配達先ではいろんな場面に遭遇した。だが、店が終わるとヘッドホンをつけ、自分だけの世界に浸る。音楽を聴いている時は、自由な気分になれる。
ある日、カティアがピンクフロイドの「狂気」を見つけた!と、LPレコードを手に喜んでいた。「あの時代は面白かった」カティアはサロールをロシアレストランに連れて行った。店員も常連客たちも、皆が彼女に敬意をはらっている。カティアは元バレリーナだったのだ。
そんなある日、配達先で客から襲われそうになったサロールは、カティアに不信感を持ち絶交を言い渡す。後日、カティアはサロールの家を訪れ、彼女を草原へ連れていく。路上で野菜やきのこを売る子どもたちがいる。それはサロールが今まで観たことのない光景だった。
その日以来、サロールにも変化が訪れる…。
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