story
マニラ首都圏近郊のモンタルバン地区。急斜面の岩山で少年がハンマーを振りかざし、岩を砕いている。砕けた岩をさらに小さくする子どもたち。集まった岩のかけらを運搬する年かさの少年たち。まるで遊び場のように時に、は笑顔も見せ、重労働をこなす。
畑仕事から米の脱穀、炊飯、おかずの魚釣り…少女はすべてを一人でこなす。鳥をナイフで絞めるのも一人。海辺で働く少年は、鼻に呼吸用のチューブを装着して海に潜り、海底の金鉱から石を採掘する。
通りに集まって荷物運びをする少年たち。小さな身体に重過ぎる荷物を背負い、山を越える。力比べをするかのように、荷物運びを日課とする子どもたち。だがある日、強烈な痛みに襲われ身体に異変が起きる…。
フィリピンのパヤタス地区。ダイオキシンの影響で水頭症として生まれた少年アレックス。幼い頃は家族とは別棟で暮らしていた。入り口には鉄格子。だが成長し、母親の付き添い付きで、念願の学校通いが叶う。皆が彼を気遣い見守っている。彼には夢があった…。
大きな瞳が愛らしいグラディ・メイも、水頭症として生まれた。赤ん坊の頃からずっと寝かされているが、成長するにつれ、自分も歩いたり外に出たくなる。おしゃれもしたい。
カメラはそれぞれの子どもたちの成長を見つめていく。
アジコのおすすめポイント:
フィリピンで第2のスモーキーマウンテン(かつてマニラに存在した巨大なゴミ集積所とその周辺のスラム街)と呼ばれるパヤタス地区。本作は2010年から8年間の撮影期間をかけて、その苛酷な環境で生きる子どもたちを見つめ続け、成長の記録を焼き付けた渾身のドキュメンタリー作品です。2018年に完成してマニラで試写会が行われ、高い評価を受けていますが、その後のコロナ禍の影響もあり劇場公開はされていません。2022年に若干の再編集を行いファイナル・ヴァージョンが完成。日本公開となったのが今回の公開作品となります。製作&監督は三里塚闘争の中でドキュメンタリー映画を学んだ瓜生敏彦。撮影監督として映画やTVで活躍した後、マニラに拠点を移し、右腕として演出や撮影・編集に携わっているビクター・タガロ監督と共同で本作を完成させました。ナレーションはいっさいなく、ひたすら労働に励む子どもたちがカメラに向ける笑顔と苦しみ、悲しみもすくい取っています。家族も登場します。一人の少年の人生や希望も記録されています。そこから何を感じるのか…。知ることだけでも大切だと伝わってきます。瓜生監督は2001年に、子どもたちが無償で学べる学校を設立。NPO法人も立ち上げ、2014年にはマカティ市に瓜生劇場も建設。子どもたちの自活の道をサポートし続けています。
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