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成功したオタク

成功したオタク(ソンドク/Fanatic)

監督:オ・セヨン
助監督:キム・タウン、イ・ヒジョン、シン・ウンジュ
撮影:オ・セヨン
編集:オ・セヨン
出演:キム・タウン、キム・スンヒョン、キム・ウンビン、ジュジュ(仮名)、ソ・ジェウォン、ヤン・ヘヨン、パク・ヒョシル、イ・ミンギョン、ナム・ミョンファ、パク・ソンヘ、オ・セヨン

2021年/韓国
日本公開日:2024年3月30日
カラー/16:9/85分
字幕:
配給:ALFAZBET

2021年 釜山独立映画祭 メイドイン釜山 審査員特別賞


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story

 オ・セヨン(監督)は中学生の頃、推しの歌手チョン・ジュニョンに夢中だった。覚えてもらうため、サイン会やファンミーティングに韓服を着てでかけ、ジュニョンに声をかけてもらえるほど「成功したオタク」になっていた。ファンの間でも一目置かれる存在になっていたのだ。

 ところが、チョン・ジュニョンがわいせつ動画の流布、および集団性暴行事件を起こして犯罪者になり「失敗したオタク」に転落する。傍聴券を入手して初公判で目にした彼はすでに別人だった。気持ちは複雑だが、重大な罪を犯した者は厳罰に処せられるべきだ。彼女の答えは決まっていた。

 重い気持ちで過ごしていた頃、まだ彼を応援しているファンの存在を知る。オ・セヨンはカメラを携え、インタビューをして回る。助監督のキム・タウンはBIGBANGのV.Iの長年のファンだった。二人は思い出話をしながら、グッズのお葬式を行う。中には捨てられない物もある。それはあの頃の思い出のせいだ。

 チョン・ジュニョンには懲役7年が求刑された。ファンたちは過去を汚され、人生にも影響を残す。ファンも被害者なのだ。アイドルには社会的責任感が必要だ。オ・セヨンは当時の日記や手紙を読み返し、最初に記事を書いたことでファンから責められたパク記者を訪れ謝罪する。

 取材に応じたパク記者は、当時の状況を理解しており、オ・セヨンを慰める。それは「パク・クネ元大統領の支持者に似ている」とも。オ・セヨンは太極旗柄のスカーフを巻き、太極旗集会に行ってみる。それはかつて見慣れた風景と似ていた。

 一番近くに、傷ついたオタクがいた。それは演劇映画科の大学教授である母親だ。彼女は有名俳優チョ・ミンギのファンだった。彼は Me Too 運動で犯行の事実が明るみに出ると自ら命を絶つ。母親やその後の友人たちとの取材のなかで、オ・セヨンは推し活や真の「成功したオタク」になる意義を探っていく。

アジコのおすすめポイント:

今年で25歳になる若手女性監督オ・セヨンの長編デビュー作です。テーマはずばり「推し活」とファンたち。推しが犯罪者になってしまったという自らの体験と、同じ体験をした友人・知人・ファンたちをインタビューし、「成功したオタク」という黒歴史から脱却。別の意味での「成功したオタク」になろうとする過程を追ったユニークなドキュメンタリーです。「強制終了となった推し活はさておき、傷を負ったファンたちの話を聞くためにカメラを回した」と語る監督は、自分自身の心も分析し、また観客にも考えるきっかけを提示しています。

芸能産業が巨大でファンダムの熱気も熱く、さらに数々の不祥事発覚や芸能人の自殺が多いのも韓国ならでは。芸能人にとっては様々なプレッシャーが大きいという側面も一因としてあるように思います。Me Too 運動以降、日本でも様々な問題が発覚。推し活でいえば、未だ続く旧ジャニーズ事務所の問題など、日本にも大勢の傷ついたファンがいることでしょう。そういうファンたち、一人一人の気持ちに寄り添った本作は一見の価値ありです。そして、タイトルにもあるように「推し活」を否定するのではなく、むしろ「推し活」の意義も提示されています。アイドルに限らず、押しのある人って生き生きしていますもんね。後半に登場する監督のお母さんによる「好きになった過程が重要」は名言です。

尚、本作は2021年製作で、撮影期間は2019年7月から2021年8月。おりしも先日、3月19日にチョン・ジュニョンは5年の刑期を終えて出所。今後の活動は不明となっています。

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