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台湾の原点とも言われる台南を、映画イラストライターの三留まゆみが訪れる。通訳は俳優のボーハオ(柏豪)。最初に訪れたのは、1950年に開業した老舗映画館の全美戯院。アン・リー監督が少年時代に通ったという、この映画館の看板絵を描いているのが、手描き看板職人の顔振發(イェン・ジェンファ)。2023年6月、顔さんを4日間取材する。
顔さんのアトリエは通りに面した路上にある。大きな作品が並ぶ中、製作中のキャンバスが立て掛けられ、『スパイダーマン』の看板の上に白いチョークで下絵が描いてある。色とりどりのペンキが並び、大きなパレットに平筆1本で色を作り、見本を見ながら直接色を載せていく。筆致は早い。2日から3日で完成させる。今回の絵は『スラムダンク』だ。
子どもの頃から絵が得意だった顔さん。18歳の時、広告看板絵の師匠(陳峰永)と出会い弟子入り。それから50年。看板制作から設置まで、一手に引き受けた。気持ちが乗れば楽しく描けるが、疲れているとうまくいかない。よくできた絵が消えるのは残念だが、全ての絵を残すことはできない。気に入っているのは『トップガン』と笑う。
撮影隊は、さらに顔さんの故郷・下營も訪れる。顔家の代々の先祖が祀られる顔氏家廟。山東省から台南へやってきた顔家の祖先は孔子の一番弟子・顔回で、今は99代目なのだとか。撮影隊はたくさんの顔さんに囲まれる。
アジコのおすすめポイント:
今年の台北映画祭(2024.4.9)でその業績を讃え、卓越貢献賞を受賞した映画館の手描き看板絵師・顔振發(イェン・ジェンファ)さんに4日間密着したドキュメンタリーです。監督は『恋恋豆花』で台湾の食文化を紹介した今関あきよしさん。大好きになった台湾で、今回は人間国宝とも言える映画の手描き看板絵師を紹介。その技と人間に迫ります。映画館は今年公開の『青春18×2 君へと続く道』にも登場した名画座・全美戯院。キネマ旬報などでお馴染みの映画イラストライター、三留まゆみさんがナビゲーターを務め、看板絵にも挑戦しています。まさに魔法のパレットを駆使して長年の感で色を作り、たった1本の平筆でスイスイと描いていく様は魔法のよう。映画では語られませんが、網膜の負担が大きく、右目はほとんど見えない状態なのだとか。途中から思わずフレームインしてしまう今関監督にとってはアイドルの顔さん。本作は今年6月に全美戯院でプレミア上映され、顔さんは自分の映画の看板絵も描いたそうです。
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