story
台中の下町で40年。アールイ(ルー・シャオフェン)は昔ながらの理髪店を営んでいる。その日、愛用の理容道具を携えたアールイは店先に「本日公休」の札を掲げ、古い愛車で出発する。病気で来られなくなった常連客の街まで出張することにしたのだ。スマホを食卓に置いたまま。
台北でスタイリストをしている長女シン(アニー・チェン)が、久しぶりに実家に戻ってくるが店が閉まっている。近くに住む兄で長男のナン(シー・ミンシュアイ)に連絡して来てもらうが、母の行く先はわからない。
ナンは定職につかず、一攫千金の夢を見ている。二人は街のヘアサロンで美容師として働く妹で次女のリン(ファン・ジーヨウ)にも連絡する。リンの店では最近入ったイケメンのアンディ(リン・ボーホン)が宣伝上手で、担当顧客が次々と彼に流れていた。
母のいない実家で途方にくれ、心配する3人。リンには元夫チュアン(フー・モンボー)との間に幼い息子がいる。価値観の違いで別れたが愛がなくなったわけではない。自動車修理店を営むチュアンは誠実で、息子やアールイのこともよく気にかけていた。
その頃、スマホを忘れて道に迷ったアールイは、訪問先に連絡もできず困っていた。田舎道をぐるぐる回るうちに、長髪の親切な青年(チェン・ボーリン)と出会う。彼は都会を離れ、田舎で農業を始めていた…。
アジコのおすすめポイント:
昔ながらの理髪店を舞台に、40年間ずっと仕事を続けている母親と巣立った子どもたちの人生を交互に描いた人生讃歌です。理髪店で育った娘2人はスタイリストと美容師に。息子はビジネスで儲けようと模索中。皆それぞれの人生に手いっぱいで、一番やさしく頼れるのは次女の元夫。幼い孫がいるので家族関係が続いています。しかし、母一人でスマホを忘れて外出となると、認知症の不安も出てきて…。監督はフー・ティエンユー。ウー・ニェンチェン監督の元で映画を学んだ彼女が、自身の母親の物語を3年がかりで完成させました。ロケ場所も実家のお母さんの店。主演のルー・シャオフェン(『客途秋恨』)は「こんな脚本を待っていた」と出演を即決。約4ヶ月のヘアカット特訓を受け、見事な演技で銀幕に復活しました。子どもたちや次女の元夫も、出張理髪という旅に初めて出た母親も、それぞれに大切なことに気づき、新たな明日に踏み出していく優しくて温かいストーリーです。「人生は自分の行動の集大成」と語る監督。一歩踏み出すことで、別な希望が見つかるかも…という勇気がもらえます。ちなみに、舞台となった台中の「家庭理髪」店では監督のお母様が今もお店を営んでおられるそうです。
|