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よみがえる声

よみがえる声(Voices of the Silenced)

監督:朴壽南(パク・スナム)、朴麻衣(パク・マイ)
助監督:佐藤千紘
撮影:大津幸四郎、星野欣一、照屋真治、朴麻衣、金稔万、
   キム・ミョンユン
編集・プロデューサー:朴麻衣、ムン・ジョンヒョン
フィルム復元協力:安井嘉雄

2025年/日本・韓国
日本公開日:2025年8月2日
カラー/16:9/DCP/5.1ch/148分
配給:『よみがえる声』上映委員会
©『よみがえる声』上映委員会
2023年 釜山国際映画祭
 ワイドアングル:ドキュメンタリー部門 大賞
2023年 ソウル独立映画祭
 コンペティション部門 独立映画協会選定賞
2024年 ムジュサンゴル映画祭 ニュービジョン賞/観客賞
2024年 ジャン・ルージュ国際映画祭
 国際コンペティション部門 リビング・ヘリテイジ賞
2024年 野の花映画賞 大賞
2025年 韓国独立映画協会 独立映画賞
2025年 高円寺ドキュメンタリーフェスティバル
 コンペティション部門 大賞

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documentary

 パク・スナムは1935年に日本で生まれた在日朝鮮人2世だ。当時の皇民化教育を受け、皇国少女として育つが、10歳の時、美しいチマチョゴリを着た母が石を投げられ罵声を浴びる。チマチョゴリの中に逃げ込んだ少女は、その時から自身のアイデンティティについて意識し始める。

 朝鮮半島が38度線で南北に分断されたまま、植民地から解放された。スナムは朝鮮学校で祖国の歴史と文化を学び、民族としての魂を取り戻していく。焼肉屋と作家活動を続け、娘には好きな歌「麻衣太子」から「麻衣」と名付けた。作家活動はやがて映画製作に向かっていく。

 今年で90歳を迎えるスナムの家には、約40年前から撮り続けた50メートル以上の16ミリフィルムと取材した音源が残っていた。大量の貴重な未使用素材。娘の麻衣も母の映画を手伝っており、これらの素材を劣化する前にデジタル化し、1本の映画にしようと考える。

 娘は母の人生の記録として、母は真実を伝える作品として。映画の方向性で激しく衝突する二人。1週間後、スナムが脳梗塞で倒れる。その後、回復したスナムから昔の話を聞く麻衣。スナムが作家活動を始めたきっかけは、1958年の小松川事件だった。

 定時制の女子高生が殺され、18歳の犯人イ・ジヌ(李珍宇)が自白して逮捕される。他にも余罪があった。差別社会を恨んでの犯行だったが、死刑判決を受ける。日本の著名な文化人たちから助命嘆願運動があり、スナムも参加するが、判決から4年後、異例の速さで絞首刑が執行された。

 当時は北朝鮮への帰国事業が始まっており、北朝鮮にルーツを持つスナムは朝鮮総連の記者として活動していた。だが、総連から活動を禁じられて組織を離脱。犯人とやりとりを続けた手紙の往復書簡集「罪と死と愛と」を出版し、ベストセラーとなる。スナムは被害者家族にも取材をし、関東大震災当時の朝鮮人大虐殺のことを知った。

 以後、スナムは一人で活動を続け、朝鮮人被爆者や軍艦島の徴用工、沖縄の軍属や慰安婦などの取材を続けていく…。

アジコのおすすめポイント:

在日朝鮮人2世として、一人で映像作家活動を続けて来たパク・スナム(朴壽南)さんが、同じく映像の道に進んだ娘の麻衣さんと作り上げた作品です。これまでに4本のドキュメンタリーを制作。撮りためたまま眠っていた貴重な未使用フィルムや音源を劣化する前にデジタル化し、さらに新たな作品としてまとめあげました。とはいえ、膨大な断片的映像や音源を、1本の作品として紡いでいくのは難しかったことでしょう。全体的に印象に残るのは、パク・スナムさん本人の凛とした姿。若い頃から美しくオシャレだったであろうスナムさん自身が前面に出ています。それは娘の麻衣さんが、全体を母の活動の記録としてまとめたからだと推察。人間パク・スナムの実像がわかるよう、日常の風景や出来事、孫との楽しいやりとりも頻繁に挿入されており、残りの人生は再び沖縄と向き合いたいと語る姿で終わっています。本作では監督であると同時に、撮影時のことを語る証人として登場しておられます。朝鮮人被爆者の取材時、ほとんどの人が沈黙していたこと、そして日本語も韓国語も苦手で聞き取りにくかったため、ペンから映像に変えたというエピソードも、伝えることを重視したスナムさんらしい。知らなかった事実や知るべき歴史がたくさん登場しますが、一人の女性としての生き方としても興味深い作品となっています。

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▼公式サイト ▼予告編