まず新郎が友人を伴って新婦の家にお迎えに行き(きれいに飾られた高級車で行くのが一般的)、そこでは新婦の友人が色々無理難題を吹っかけて新郎の愛を試します。その後「請茶」の儀式として新婦方の親戚に二人で「りむ・てー(福建語でお茶をどうぞの意)」と言って紅棗で煮出した甘いお茶を捧げます。これを飲んでもらえば二人の結婚を承諾するということです。その後は新郎の家に行き同じ儀式を繰り返します。また、紅棗茶に入った赤い湯円(あんこ入り白玉団子)を夫婦で食べさせあいもさせられます。
それから夜は披露宴。1テーブルの定員の相場が10人で、大体30テーブルくらいがスタンダードな規模ですので、既に出席者は300人という大宴会状態です。また、招待状には19時半開宴と書かれてありますが、まず時間通りには始まりません。なぜかと言うと、こういうお呼ばれごとに時間通りに出席するのはご馳走目当てのさもしい奴だ、という中華の考え方のせいです。このおかげで結婚式の始まりはいつも1〜2時間遅れです。
近頃は独自色を出そうとするカップルが、始まる前に延々と自作のビデオを流したりして食事の開始が更に遅れ、空腹のお客が内心殺気立っている光景もよく見られます(笑)。それに、お客が日本では考えられないくらいのカジュアルな服装でやってくるのも特徴でしょう。さすがに短パンで来る人は見られませんが、Tシャツにジーンズはざらです。
基本的には「来た、見た、食った」の披露宴。新郎新婦は入場してすぐ壇上でケーキカット。そして食事が運ばれ、2〜3品後に新婦はお色直し。お色直しがすんで再入場の後は、家族一同と新郎の友人達が壇上に上って「やむせん(福建語で乾杯)」の音頭を取ります。この「やむせん」、なるたけ大きな声でしかも息の続く限り「や〜〜〜〜〜〜〜む(ここで一回息を吸う)せん」と叫び、これを三回繰り返して杯に口をつけるおなじみの儀式です。その後、新郎新婦とそれぞれの家族は、各テーブル(ホテルで30テーブル程度)を回って乾杯するので食事する暇もありません。
ディナーが終わるのが大体午後11時ごろ。三々五々帰っていくお客を新郎新婦は出口で一人一人お見送りし、なが〜い一日は終わるのでありました。
●from そう・みゆき:profile
シンガポールと関わって十余年、中国系シンガポール人の夫との間に二人の娘がおり、現在は子育て真っ最中。英語、日本語、北京語、福建語(!?)を駆使してスーパーディープなシンガポールの「今」をお届けします。
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