ゆるりと過ごす楽しさと、
ものづくりのうれしさを満喫しよう
−Creative Box in Shanghai 牛心
2007年4月15日
上海の街は眠ることを知りません。走り続けることは決して悪いことではないけれど、その速度があまりに速すぎると、ココロの中の何かを置き去りにしてしまいそうです。そんな時代にあって、時間を使うことの楽しさや、とりとめのないことの中におもしろさを感じることのできる空間が誕生しました。今月は『Creative Box in Shanghai 牛心(USHIGOKORO)』をご紹介します。
中国ではこの数年、現代美術が盛り上がりを見せています。ここ上海でも『莫干山路50号』という有名な空間があります。しかし、日本ならプロアマ問わず誰でも今日から「アーティスト」となって、好きな時に好きな場所に好きな作品を置く空間があるのに、上海にはビジネスと切り離された空間でものづくりを楽しむ場がない、そう感じる女性がいました。
彼女の名前はマツダさん。彼女が中国で、日本のカルチャーと音楽を紹介するテレビ番組制作を担当していた時、東京にある『ニヒル牛』というスペースに出会います。こんな場所が上海にもあれば、と夢は膨らんでいきました。そして彼女の夢に共感し共に動き始めた仲間たちと、『ニヒル牛』の人たちの協力を得て『牛心(USHIGOKORO)』は誕生しました。
このおもしろい名前は『ニヒル牛』のプロデューサーであり、元「たま」の石川浩司さんが名付け親。流行やさまざまな制約を受けず、自由にものづくりを楽しむ人々のさまざまな想いが集う空間となりました。場所は上海っ子のショッピングストリート・淮海中路から、少し北へ上がった所にある洋館の奥にあります。小さな小さなスペースですが、プレ・オープニングとなった4月15日は中へ入りきれないほどの人で賑わっていました。
中は半分が、常設となっているレンタルボックスのスペース。廃材を生かして作られたぬくもりを感じるボックスには、かわいい豆電球が点いています。それぞれの中は、小さいながらひとつの世界。ものづくりを楽しんでいる人なら、誰でも借りることができます(条件等はサイトにて)。さまざまな国籍の作家さんの手から生まれた作品が、懐かしい気持ちや新鮮な気持ちを運んでくれます。もちろん、気に入った作品があれば購入できますし、眺めているだけでも楽しいです。
日本でおもしろい作品を作っている作家たちを紹介できる場にもなるようにと、日本での作品募集も始まりました。もう半分は企画展のスペース。今回は「上海のおとしもの」と題して、変わりゆく上海の街角で捨てられてゆくもの、忘れられてゆくものを集めて展示しています。その「おとしもの」はスタッフだけではなく、お客さん一人一人がそれぞれの視点で、見つけてきたもの。参加型の展示に、大人も目をキラキラさせていました。さらに、2週間ごとに作家が変わる個展スペースも準備されています。
敷居の高い芸術はどこにでも転がっていますが、こうした身近に心躍らせることのできる場所は、上海ではまだまだこれからのようです。今はまだ空き家もありますが、ここから新しい芸術の楽しみ方が流行っていくとおもしろいですね。
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