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今年の東京国際映画祭(10/21-29)も、たくさんのゲストがやって来ました。世代交代を反映してか、今回は特に若手スターたちの参加が多かったようです。平行してヴィック・チョウがやって来たり、ASIAN NEXT PAX MUSICA が開催されたりと、取材陣も大忙しでしたが、貴重なティーチインや舞台挨拶、イベントなどもありましたので、まとめてご紹介します。
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『王の男』のイ・ジュンイク監督(右)とイ・ジュンギ
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特別招待作品
オープニングのレッドカーペットにも登場したのは、『王の男』で大ブレイクしたイ・ジュンギ。今回はイ・ジュンイク監督(上)との来日です。オープニング・セレモニーではタキシードで開会宣言をし、渋谷と六本木の舞台挨拶もこなす大忙しの1日でした。左上は『あなたを忘れない』に主演したイ・テソン。モデルとなった故イ・スヒョンさんの御両親や主題歌の槙原敬之を迎えてのイベントもありました。
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コンペティション
左よりサム・レオン、エディソン・チャン、ソイ・チェン監督
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エディソン・チャンとサム・リーが主演したソイ・チェン監督の新作『ドッグ・バイト・ドッグ』は、コンペティション部門での参加。ティーチ・インの様子をがっつりご紹介します。
闘う犬として育ったカンボジアの孤児が、殺し屋として雇われ香港に潜入。警察チームと死闘を繰り広げ、命からがら逃げ帰るが…という、ハードなバイオレンスにして泣ける展開となっている本作。エディソンは、凶暴だが孤独な異邦人を演じています。その役作りはどのように?
エディソン「カナダから香港に移った時は、中国語もできず友だちもいなくて、孤独を味わった経験があります。その時の気持ちを思い出し、それから監督と話合って、彼はどういう生まれで、なぜ孤独なのか、なぜ殺すのか、どうやってサバイバルするのかを考えました。また、モデルとなったカンボジアの子どもたちの映像をたくさん見て、キャラクターを作っていきました」
迫力ある暴力シーンについては「最初からバイオレンスを強調するつもりではなく、物語の展開につれて必然的にこうなった」と監督。生きるために次々と殺戮を繰り返すエディソンもこわいけど、それを捕らえようとする刑事サム・リーも、終盤では怪物に! 二人の対決シーンはどうだったのでしょう?
エディソン「実はうれしかったです。(会場笑)あれだけのエネルギーと熱意で、凄まじい演技をしてくれたので、僕も同じくらいのエネルギーで対応できました。それは俳優にとってすごく大事なこと。サム・リーが素晴らしい俳優であることを、この映画は証明してくれました」
監督「撮影前に、生死を賭けての闘いについて、かなり綿密で細かい打合せをしたので、撮影時はなるべく早く終わらせようとしました」
そう言えば、エディソンに賞賛されたサム・リーはこの頃、金馬奨の主演男優賞にノミネートされたばかりでした。カンボジア出身ということで、今回はほとんどセリフのないエディソン。苦労したことは?
エディソン「セリフがない場合は、違う演技スタイルになります。まず演じる前に、監督から背景などのいろんな情報をもらいました。重要なのは、自分が感じること。セリフがある時は、怒ったり怒鳴ったりすれば、怒っていることが伝わるけど、セリフがない場合は、それを実際に心で感じていなければなりません。最初は大変でもがきました。とてもクレイジーな挑戦だったし、設定もセットも特殊なものでしたが、それが逆に助けになったし、周囲の人たちも助けてくれたので、正しい方向に進めました」
昨年の映画祭で上映された『同じ月を見ている』でも、セリフの少ない役柄を見事にこなしただけに、今回の役作りに関しては心構えができていたかも。目の演技がさらに深まっておりました。では、大変だったシーンは?
エディソン「ア〜…全部です(笑)。毎日が大変だったんです(笑)。1ケ所だけ役柄上で理解できないシーンがありました。初めてペイペイと出会うところです。なぜ彼女に特別な感情を抱くのか? 今すぐカンボジアに帰りたいなら、邪魔者は消したいはずなのに、なぜすぐに殺さないのか? 納得しないと嘘になるから、観客にもわかってしまいます。それで、何度も何度も話合いをして説得され、やっと納得して演じたので、記憶に残る印象的なシーンになりました。演技の勉強にもなったし、監督とも親しい関係になり、いいコミュニケーションがとれました。これは映画を撮る上で、貴重なプロセスだったと思います」
コンペティション部門で審査員特別賞を受賞した中国映画『十三の桐』のルー・ユエ監督と、主人公の女子高生を演じたリウ・シン。ボーイッシュでかわいい! 最近の中国では、中性的な女の子が流行なのかも。
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そんな勉強熱心なエディソンですが、役柄がプライベートに影響することは?
エディソン「僕は役柄からなかなか離れられないタイプ。自分では気づかないけど、撮影中はちょっと違うと家族から言われます。家ではあまりいろんなことをしないで、一人でいるようにしています。ただ、役柄でいようとはするけど、あまり入り込まないようにもしています。特にこの役だと、夕食の時、誰かを殴りそうになるから(笑)。それはよくないでしょ(笑)。撮影中は役柄に集中しているので、あまりストレスは感じません。方向が違えば監督から言ってくるから、プレイバックもチェックしません。あまり考え過ぎず、やりたいように自信を持ってやるのがいいと思います」
なるほど。最後に、現在撮影が進んでいるソイ・チェン監督の次回作『軍鶏』(原作は日本漫画の『軍鶏(しゃも)』。主演はショーン・ユー)についても質問が出ましたが、それはプロデューサーのサム・レオンさんから却下されてしまいました(笑)。『ドッグ・バイト・ドッグ』は来年公開予定です。
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