2021年3月20日 新宿K's cinema
左よりアンシュル・チョウハン監督、円井わん、間瀬英正、山田太一、清水拓藏
日本で映画監督として活動しているアンシュル・チョウハン監督の長編第2弾『コントラ』が3月20日より絶賛公開中です。アジクロではK's cinemaで開催された初日舞台挨拶を取材させていただきました。祖父の死と共に出現した逆走する謎の男と邂逅する父娘の物語。舞台にはアンシュル・チョウハン監督のほか、主人公の高校生を演じた円井わんさん、謎の男を演じた間瀬英正さん、主人公の父親役の山田太一さん、その従兄弟役の清水拓藏さんが登壇。MCはプロデューサーでもある茂木美那さんです。
本作は、2018年の11月末から12月初旬までの10日間、岐阜県の関市で撮影され、プロデューサーでもある山田太一さんのご実家や地元の方々の協力で撮影されたそうです。
Q:撮影で大変だったのはどんなところでしたか?
円井「映画は2時間半くらいあるんですけど、10日間で撮り切ったのでとても大変かつ、寒い。アンシュルに川に行け、川に入れって…入れっていうか、川で遊ぼうみたいな(笑)」
マイナス5度の極寒の中での撮影でしたよね。
円井「ほんとに寒くて大変でしたけど、結果よければ全て良しという感じでした」
間瀬「寒いという話でしたが、これ12月なんです。私の演じる男が布切れ一枚ですので、その姿を見ていただければと思います(笑)」
2021年ならではのカラフルなマスク登壇。写真撮影の時だけはずします。
山田「撮影現場はですね。しっちゃかめっちゃか始まってたっていう記憶が、今も走馬灯のように出てきますけど。寒かったと言えば、僕らも川に入ったんです。マイナス5度まではいってなかったと思いますけど、やっぱり寒かったね(笑)。そのシーンとか、結構長回しで撮ってるところがあったので、事前にちゃんと打ち合わせしておかないと、間違った方向に走ってしまうような危険性もあったので、そういうところは気をつけて演じようと心がけていました。
僕はプロデューサーという立場もあったので、この二人が体当たりの演技を試みるもんですから、怪我が多いんですよ。役者は怪我しちゃいけないんだから気をつけてね、と。いつもヒヤヒヤしながら見てた記憶があります(笑)。ほんとうに、その体当たりの演技を楽しんでいただけたらと思います」
清水「山田さんのご実家を借りて、朝から晩まで、スタッフ、キャストと共に合宿状態のような形でできたことが、作品に向けてすごく集中できたのかなと思います。アンシュルの作品は、出来上がってウワッ!と。役者がほんとにびっくりするくらいの詩的な感じなんです。またベクトルが心の方に、内側に向いてるのを、映像で外側にポーンとやってる。僕も大好きな作品なので、ぜひ楽しんでください」
Q:演出はどのようにやられたのですか?
監督「この映画は、ほんとうに役者たちが、役としてではなく、チームとして、一丸となって一緒になってくれたのが一番大きかったと思います。山田さんのご実家で、皆で寝たり、食べたり、ご飯を作ったりと、すべて一緒にして撮影に挑んでいたというのがあったので、そういった皆さんの協力がなければ、この映画はなしえなかったと思います」
Q:映画の見どころを教えてください。
監督「この映画を作っていた時期は、気持ちがとても落ち込んでいたので、いろいろとうまくいかないところもありました。そんな中で作ったこの映画を、どういう風に日本の皆さんに信じてもらえるか、どういう風にリアルに表現できるか、というところを大切にしたかったので、すごくリサーチをして、日本では戦争時代にどんなことがあったのかということもきちんと調べました。なので、ご覧になると身近に感じていただける部分があると思います。戦争を経験されたお祖父さんの世代と一緒になって、映画を通してその時代を省みるように観ていただければ幸いです」
円井「私たちの世代は戦争を知らないのですが、地方都市の閉鎖感とか、日本ならではの問題であったりというのを、アンシュルがちゃんと描いているので、そういうところを見てほしいと思います」
間瀬「この映画は珍しくモノクロの映像でできております。ですが、編集された作品を見て、私も好きだと思えるくらい美しい映像になっていますので、そこを堪能していただければと思います。あと、景色ですね。田園風景の美しさとか、田舎というと言葉がよくないですが、地方都市の景色を見ていただければと思います。それから、YouTubeで、あなたの後ろ向きに歩く男は逆再生をしたんですね?とよく言われるんですが、実際に後ろ向きでやってますので、そちらもご堪能いただければと思います!」
この作品には監督自身のお祖父さんとの思い出が反映されています。日本で映画を撮るにあたり、第二次世界大戦時代の日本とインドで起こったことも調べ、日本の観客が観てもリアリティのあるものにしていったとのこと。かつて軍隊生活で苦しんだ人々を自分の芸術的手法で描き出し、この映画を祖父や若い兵士たちに捧げています、と語っておられました。
とはいえ、真正面に戦争の苦悩を描くのではなく、むしろ、そこから逆走してきた男が解放されて、対立や欲求不満で爆発しそうな父娘の媒介となり、光を与えていくという作品になっています。コントラとは「Contradiction=反対」という意味。撮影はエストニア出身のマックス・ゴロミドフ。人工的なライトを使用せず、自然光やスモークを使うのが特徴で、繊細で美しい映像を紡いでいます。大きく切り取った風景や大自然も見どころです。
本作は毎週末トークショーが開催されており、4月も土日に多彩なトークショーが次々と追加されています。ぜひ、公式サイトをチェックして映画と共にお楽しみください。劇場では、映画の背景や豊富なインタビュー、解説などが満載の貴重なパンフレットも販売されています。
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