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コントラ

監督:アンシュル・チョウハン
脚本:アンシュル・チョウハン
撮影:マックス・ゴロミドフ
編集:ランド・コルター
音響:ロブ・メイズ
音楽:香田悠真
出演:円井わん、間瀬英正、山田太一、清水拓藏、セイラ

2020年/日本
日本公開日:2021年3月20日
白黒/2.35:1/DCP=BD/144分
配給:リアリーライクフィルムズ+Cinemaangel
(c)2020 Kowatanda Flims
2019年 タリン・ブラックナイト映画祭
 グランプリ/音楽賞(香田悠真)
2020年 大阪アジアン映画祭 最優秀男優賞(間瀬英正)
2020年 SKIPシティ国際Dシネマ映画祭
 国内長編コンペティション部門 作品賞
2020年 ニューヨーク・ジャパンカッツ 第1回大林賞


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コントラ(KONTORA)

story

 その日、壊れかけた自転車に腹を立てながら帰宅した高校生のソラ(円井わん)は、いつものように祖父に声をかけた。だが、様子がおかしい。眠ったように動かない祖父の前に古い箱があった。そこへ父(山田太一)が帰ってきた。ソラは咄嗟に箱を隠してしまう。

 祖父が墓に入った頃、町に不思議な男(間瀬英正)が現れる。裸足でボロボロの服を着た浮浪者のような汚れた男。だが、嬉しそうに両手を広げ、後ろ向きに走っている。一方、ソラは祖父の遺した箱の中に「戦時記」と書かれた手帳を見つける。祖父が戦時中に書いた日記で、たくさんの精密なスケッチや絵が添えられていた。

 朝、ソラは自転車で学校へ行く途中、後ろ向きで歩く男とすれ違う。そして学校へは行かずそのまま山に入り、日記に書かれていた祖父の宝探しに没頭する。ソラは木工所を営む生真面目な父と二人暮しだが、母が亡くなった後、互いにどう接したらいいかわからない関係になっていた。唯一、心が許せた祖父はもういない。

 工場を営んでいる叔父(清水拓藏)の家で、食事会が開かれた。ダンスがしたくて東京へ出た娘のハル(セイラ)は家に戻り、工場で働いている。卒業したら東京へ行きたいと願うソラは、ハルに自分の感じていることを打ち明けた。その頃、叔父から家を売ってくれと言われた父は激怒し、酒を飲んでいたのに車でソラと帰宅する。

 そして、暗がりの中、後ろ向きで車に向かってきた男を跳ねてしまう。ソラは逃げようとする父を説得し、手当てをするために彼を家に連れて帰るのだが…。

アジコのおすすめポイント:

戦時中に思いを馳せて亡くなった祖父の心と、やり場のない感情で暴走しがちな女子高生の心が、祖父の遺した日記でつながり、不思議な青年を介して父と娘の関係が回復していく様を描いた人間ドラマです。山に囲まれた田舎町を背景に、大胆な構図と美しいモノクロ映像で物語を綴ったのは、インド出身のアンシュル・チョウハン監督。『東京不穏詩』に続く2作目で、数々の作品賞に輝いています。本作には軍隊経験のある監督と父の関係、祖父のエピソードなども盛り込まれているそう。私的な作品でありながらも、日本に存在する普遍的な問題があぶり出されています。

主演は本作が初主演となる円井わん。舞台で活躍する間瀬英正が逆走する男をユーモラスに演じ、昨年の大阪アジアン映画祭で最優秀男優賞を受賞しました。この男、右手でしかものを食べません(左手でした。片手だったのでつい勘違い)。これは監督によるインド印でしょうか(ではなくて、間瀬さんの工夫でした)。アジコのお気に入りは、光るネオンが幻想的な誕生パーティのシーン。日記に描かれている数々の絵は、イラストレーターでもある間瀬さんの手によるものだそうです。冒頭に戦時歌謡が使われているので、お!古関裕而か?と思って調べたら、吉田正の「異国の丘」で同名の映画にもなっている有名な曲でした。ラストで何かを乗り越えた主人公の姿には既視感があり、ジブリ作品を彷彿とさせます。これも監督がアニメーター出身だからかもしれません。2018年の暮れ、真冬の岐阜県で10日間で撮影されたという驚異の作品。144分ありますが長さはまったく感じません。ぜひ、劇場で体感してください。


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