毎年6月下旬から7月中旬にかけて開催される台北映画祭(台北電影節)。今年は、6月26日に開幕し、7月18日の台北映画賞授賞式をもって閉幕しました。
オープニング作品にチェン・ウェンタン(鄭文堂)監督の『菜鳥』、クロージング作品にトム・リン(林書宇)監督の『百年告別』が選ばれたほか、ワールドプレミアとしてリー・チョン(李中)監督『青田街一號』、チェン・ヨウチェ(鄭有傑)とレカル・スミ(勒ロ戛,舒米)共同監督の『太陽的孩子』などが上映され、話題を集めました。
オープニング作品『菜鳥』のチェン・ウェンタン(鄭文堂)監督(中央)と出演者たち。
左から莊凱[員力]、ジエン・マンシュー(簡[女曼]書)、チェン監督、歐陽靖、ヨウション(宥勝)
オープニング作品の『菜鳥』は、チェン監督の5年ぶりの劇場用長編で、2010年の同映画祭最優秀監督賞受賞作『眼涙』同様警察を扱っていますが、今回はヨウション(宥勝)やジエン・マンシュー(簡[女曼]書)ら若手俳優を起用している点は違います。若手の新しい面を引き出し、社会派でありつつ一般大衆が馴染みやすい作りの映画となりました。
クロージング作品の『百年告別』は、メイデイ(五月天)のストーン(石頭)とカレーナ・ラム(林嘉欣)が主演。愛する者を失った喪失感を描いた一作で、3年前に愛妻を失ったリン監督自身の経験と深く繋がっています。上映後の舞台挨拶・Q&Aではリン監督、俳優らともに感極まって声を詰まらせる一幕も。リン監督作品は、このほか特別企画の野外無料上映で前作『星空』も上映され、根強い人気を感じさせました。
カレーナ・ラム(林嘉欣)が主演した『百日告別』
チケット発売早々に売り切れた『青田街一號』は、新進監督リー・チョンにコメディの鬼才チェン・ユーシュン(陳玉勲)が脚本を提供したホラーコメディでした。主演には、チャン・シャオチュアン(張孝全)とドラマ『結婚って、幸せですか』のソニア・スイ(隋棠)で、殺した相手の霊に憑りつかれる殺し屋の話です。今年のサマーシーズンの目玉映画のひとつと言われています。台北映画賞の審査段階では、高く評価されていたそうですが…。
『青田街一號』のチャン・シャオチュアン(張孝全)とソニア・スイ(隋棠)
コンペティション部門では、会期前半に発表される国際新人監督コンペティションで、観客賞に『さいはてにて〜やさしい香りと待ちながら〜』(作品紹介)が日本映画として映画祭史上初めて選出されました。『さいはてにて』は、日本では今年2月に、台湾では4月に一般公開されていますが、監督が台湾のチアン・ショウチョン(姜秀瓊)であることからメインのコンペティションである台北映画賞にも出品しており、台北映画賞では永作博美が外国籍女優として初の最優秀主演女優賞を受賞するという快挙を成し遂げました。
国際新人監督賞観客賞受賞のチアン・ショウチョン監督
メインコンペティションとなる台北映画賞は、チャン・ツォーチ(張作驥)監督『醉・生夢死』がグランプリである百万首賞ほか主要部門を含む6部門を受賞し、ほぼ独壇場といえる評価を得ました。受賞理由は、写実的な物語のなかに、高度で奔放な精神を描き出し、作者は勇敢な映画的言語で、夢と親しみ、自由で悲しみを抱きつつ必死に生きる登場人物たちを生み出し、セクシーで大胆かつ創作精神に満ちた作品であったとのこと。今春から監督自身は公の場に姿を見せることができない状況にあり、主演男優賞を受賞したリー・ホンチー(李鴻其)は、「この賞は監督のものです。ありがとう!」と感謝を述べていました。
『醉・生夢死』のリー・ホンチー(李鴻其)は主演男優賞を受賞
最優秀監督賞は、ツァイ・ミンリャン監督が短編『無無眠』で受賞しています。これは、昨年のツァイ監督来日時にひそかに撮ったのではと噂の一編で、リー・カンション(李康生)のほか安藤正信も出演しています。
そのほか、最優秀脚本賞と最優秀美術賞の2部門を『軍中楽園』が、観客賞を『太陽的孩子』が受賞しています。『太陽的孩子』は、チェン・ヨウチェ監督がアミ族の新鋭監督レガル・スミと組んで送る久々の劇場用長編で、原住民の村が抱えるさまざまな問題を彼らの生活目線で描いた、ファミリーで見ることのできる良作に仕上がっています。
観客賞を受賞した『太陽的孩子』
台北映画賞全体の受賞結果は、右記のとおりです。
(文・稲見公仁子/写真提供:台北電影節)
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