さいはてにて 〜やさしい香りと待ちながら〜
(The Furthest End Awaits)
story
ある日、吉田岬(永作博美)のもとに弁護士(イッセー尾形)がやって来る。30年前、両親の離婚で生き別れて以来、顔を合わせることのなかった父(村上淳)が、8年前から行方不明になっているという。岬は長年封印していた父の記憶を呼び覚ます。父はまだ生きているかもしれない。岬は故郷の奥能登で父の帰りを待とうと決意する。
さいはての海辺にある故郷には、父が残した古い舟小屋と休業中の民宿があった。車でやって来た岬は、民宿に宿泊しようとするが誰も出て来ない。舟小屋で生活を始めた岬は、その舟小屋を改装し、焙煎珈琲店「ヨダカ珈琲」を始めることにする。やがて、大きな焙煎機が運ばれて来た。
その様子を、民宿で暮らす子どもたちが興味深く見つめていた。民宿には、シングルマザーの山崎絵里子(佐々木希)と娘の有沙(桜田ひより)、息子の翔太(保田盛凱清)が住んでいた。絵里子は金沢で働くため、幼い子どもたちを置いてしばしば家を空けていた。祖母の由希子(浅田美代子)を頼りにしているが、今は入院中だ。
姉弟はふたりで肩を寄せあい、母のいない日々を過ごしていた。有沙は給食費を持って行けず、学校で孤立していた。心配した担任の城山恵(臼田あさ美)が民宿を訪ねるが、すげなく追い返される。帰りに「ヨダカ珈琲」を訪ねた城山は、岬が淹れた一杯の珈琲に癒され、店の常連となる。
一方、有沙も岬の仕事ぶりに魅せられ、初めてのアルバイトを体験する。翔太も姉を羨み、次第に岬に心を開いていく。だが、絵里子は生き方も価値観も違う岬に、嫌悪感を抱いていた…。
●アジコのおすすめポイント:
東京で焙煎珈琲店を営む女性が、父の失踪をきっかけに故郷を訪れ、そこで焙煎珈琲店を開きながら父を待つお話です。お店で出会った人々との交流を通じ、彼女やシングルマザーの女性と子どもたちも、次第に生き方を変えていきます。珈琲の香りにつつまれ、珈琲でつながっていく人々。日本映画ですが、監督を任されたのはなんと、台湾の女性監督チアン・ショウチョン(姜秀瓊)。オファーされたのが東日本大震災の日で、運命的なものを感じたという監督は、この絆と癒しの物語に被災した人々への慰めを重ねているようです。主人公を演じるのは、演技派女優の永作博美。撮影中は時間があると焙煎の練習をして、皆に珈琲を淹れてくれたとか。シングルマザーを演じるのは若手女優として活躍の場を広げている佐々木希。脇役で豪華俳優陣が物語を支えています。ホウ・シャオシェンやエドワード・ヤンの映画を彷佛とさせる視点で描かれる、さいはての珈琲店の物語をご堪能ください。(*監督インタビューはこちら)
|