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asicro interview 28

更新日:2008.10.7

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大切な赤ん坊を抱く主人公の桜桃と村の人々。豚の親子も。
胡弓を弾いているのが夫役のトゥオ・グゥオチュアン

 そうそう、豚追いのシーンはいかがでしたか?(笑)

 ミャオ「大変でした! すぐに逃げちゃうんです。撮影が終ったら、皆どこかへ行ってしまいました。豚も人間と同じで、母親が自分の子どもを守っているような感じが撮影中はしていました」

 美しいミャオ・プゥさんですが、『鳳凰・わが愛』でも『さくらんぼ 母ときた道』でも、そういう姿は見られませんね。

 ミャオ「私はこの役が美しくないとは思っていません。きれいな役柄というよりも、この役をどう演じたらよいかを考えるので、きれいかどうかは考えていません。それに、自分はそんなに美人とも思っていないので(笑)」

 でも観客としては、たとえば歌姫役とか、きれいなミャオ・プゥさんも観てみたいです。

 ミャオ「それは昔、演じたことがあります。大体の役柄はきれいな役でした(笑)」

 そういうのも観てみたいです。では、演じてみたい映画のジャンルはありますか? たとえばアクション映画とか?

 ミャオ「機会があれば、いろいろやってみたいです」

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取材時はTシャツに赤い上着、黒いブーツ姿。
行動的な一面がうかがえます。

 撮影前の普段の生活はどうしておられますか?

 ミャオ「時間があれば、今は飛行機の運転を練習しています。スポーツが好きなので、身体を動かしています。山登りもしています。今、パイロットの免許を取ろうと思っているんです。これから、空を飛ぶ日が多くなるでしょう」

 それは、映画の役作りのためではないんですね?

 ミャオ「ぜんぜん関係ありません。自分で飛ぶのが好きなんです。免許が撮れたら小型飛行機を買おうと思っています」

 気をつけてくださいね。では、パイロット役の映画はどうですか?

 ミャオ「まだ考えてないです。自分が好きなものはあまり仕事に結びつけたくないので。小さい頃から、空を飛ぶのは夢だったんです」

 最後に、映画の中で気になっていたシーンについて聞いてみました。

 さくらんぼはお好きですか?

 ミャオ「はい。好きです」

 木に登ってさくらんぼを取っていましたが、あれはほんとうに登ったのですか?

 ミャオ「あの木は高いので無理です(笑)。登ることはできるんですが、滑りやすいので」

 というところで、インタビューの時間が終了。監督にパイロット役の映画を作ってみては?などと冗談で言ってみると、慌てて「だめ、だめ」と笑いながら楽しそうに語るミャオ・プゥさんは、さばさばとした姐ごタイプの女優さんでした。インタビューの合間に、通訳をしてくださっていた監督にもいくつか質問をしてみました。

●チャン・ジャーベイ監督インタビュー

 ミャオ・プウさんを主演に起用された理由は?

 監督「彼女とは『陶器人形』で一緒に仕事をして、とても演技がうまいのはわかっていました。今回はとても難しい役なので、知っている役者じゃないと不安だったのです。それで、彼女に決めました」

 演技の上で、監督からの注文はあったのでしょうか?

 監督「具体的にはそんなにいちいち指示はしていません。ほんとうに素直にそのままを表現したかったので、その役に入ってくれさえすればよかったのです。今回はドキュメンタリータッチで表現して、位置も決めないで、ほんとうにそのままを表現しました」

 監督は日本映画を研究されていますが、そのきっかけは?

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日本を拠点に活躍中のチャン・ジャーベイ監督(左)とミャオ・プゥ
 監督「今村昌平監督の映画がとても好きで、当時は『楢良山節考』や『にっぽん昆虫記』を中国で観ていました。それで今村監督にお会いして、そのような話をしました。そして、90年に日本映画学校に入って勉強しました」

 中国ではなくて日本で勉強しようと思われた理由は?

 監督「当時、中国で映画を作るにはいろいろと規制があり、自分が思うようにものを表現することはなかなか難しかった。日本では自由にいろいろ表現できるので、日本でやろうと思ったのです」

 これまでに3作品撮っておられますが、どれも違うタイプの作品ですね。今回は泣ける文芸映画ですが、いろんなものを撮ってみたいのでしょうか?

 監督「いろんなジャンルに挑戦してみたいですね。最初はちょっとヤクザっぽい映画(『歌舞伎町案内人』)を作り、その次はホラー系(『陶器人形』)で、今回は文芸ものの映画で…。基本的には文芸作品が一番作りたかったので、今後はこういう路線でまた1本作りたいと思っています」

 次の作品は?

 監督「『夢の壁』という作品で、原作は加藤幸子さんの芥川賞をとっている日本の小説です。今、企画中で、来年撮影に入る予定です」

 最後に、公開に向けて見どころを1人ずつ話していただきました。

 ミャオ「リラックスして何も考えずに、じっくりと観ていただきたいです。感動を味わってください」

 バオ・シー「この映画を通して、母親の偉大な愛を感じて欲しいと思いました。それがこの映画を作った理由の1つです」

 監督「80年代の中国は生活は貧しかったですが、人間愛とか母の愛とか…それぞれが関係し合って、愛がたくさんありました。それが、社会がだんだん発達するにつれて、精神的に乏しくなってきた。そこで、人間の原点に戻る愛を表現したいと思ったのです」

 心暖まる人間愛、夫婦愛、そして母と娘の絆を描いた素朴な名作『さくらんぼ 母ときた道』は、11月1日より全国順次公開予定です。

(取材日:2007年10月26日 ホテルオークラにて)


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Profile
チャン・ジャーベイ
張加貝

1957年、上海生まれ。小学校の頃に文化大革命を体験。北京第二外国語大学を卒業後、中国映画人協会に所属。日本映画のシナリオと監督の研究に取りくみ、映画関連書籍の翻訳を行う。90年に来日し、日本映画学校に留学。97年に監督としてデビューし、映画やドラマ、ドキュメンタリーを作りはじめる。日中で活躍する映画人として注目されている。
filmography
歌舞伎町案内人 (03)
・陶器人形(06)
さくらんぼ 母ときた道
 (07)

「歌舞伎町案内人」

歌舞伎町案内人
主演:チューヤン、山本太郎
3675円/J.V.D.