しっかりと準備を整えてから夢に一歩踏み出そう
−シージ・レデスマ(監督)
2014年の大阪アジアン映画祭でグランプリを獲得したのが、フィリピンの新進女性監督シージ・レデスマによる長編デビュー作『SHIFT〜恋よりも強いミカタ〜』。コールセンターを舞台に、夢を追う女性とゲイ男性との交流とせつない思いを描いた本作。監督自身もコールセンターで働きながら監督を志し、夢を実現しています。アジクロでは来日したシージ・レデスマ監督に、メールによるショート・インタビューを行ない、夢を持つ人々が一歩踏み出すためのエールもいただきました。
Q:映画ではエステラの心情が描かれますが、トレヴァーの本心はどうだったのでしょう? あえて答えが出ないようにしたのでしょうか?
監督「曖昧さがテーマの一つでもあるため、はっきりと描いてはいません。エステラが自分自身の仕事について悩んでいたり、トレヴァー自身も、まだゲイだということをカミングアウトしたばかりで、本当に男性が好きなのか分からなくなっていたり…と手探りなところがあるので、曖昧な描き方をしています」
Q:本作には監督の実体験が反映されていますか?
監督「非常に多く反映されています。ですが、自分の経験だけではなく女友達の経験も含まれています。例えば、ゲイの男性と仲良くしていい雰囲気になった子もいましたが、本当に男性が女性を好きだったのか、誰とでも仲が良かったのか、心の中までは分からないので、映画は様々な要素を混ぜ込んだ作りとなっています。
付け加えるならば、ジェンダーに関して、男・女・ゲイ・レズなど、はっきりしたカテゴリーにしたくないという思いはありました。フィリピンというのはゲイに関して理解は広まっているのですが、バイセクシュアルに対しての偏見はまだ強いのです。ゲイの人もバイの人に対して偏見や、批判的な態度を取ったりすることがあります。こういった現状を受けて、あえてグレーゾーンのようなところ、中間にいるような人たちも描きたいと思いました」
Q:夢へ一歩踏み出したい人へのメッセージをお願いします。
監督「大きな決断をするというのは難しいことだというのは私にもわかります。ただし、準備はしっかりとしてください。夢に走り出すときは必ずしも自分の思い通りにはいかない。トラブルやつまずくこともあるはずですが、それに耐えるだけの環境や自分の強さ、周りを固めてから、大きな決断に踏み切ってほしいと思います。しかし、やはり自分が置かれているぬるま湯のような環境を抜け出さないと夢は叶いませんので、ぜひ新たな一歩を踏み出してほしいと思います」
(2014年10月15日)
短いインタビューですが、映画について、また夢を持つ人々への実用的なアドバイスをいただきましたので、ご紹介しました。また来日中、本作の宣伝業務にインターンとして参加した日本大学芸術学部の学生たちが試写会を企画しました。その時のQ&Aのリリースが届いているので、合わせてご紹介しておきます。
(c)2013 Cinema One Originals
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Q:『SHIFT』というタイトルにはどのような意味が込められているのでしょうか。
監督「いろんな意味が込められているのですが、1つ目は舞台であるコールセンターでの『シフト』という勤務形態の舞台設定。2つ目は、主人公エステラの『これからどのように人生をシフトさせていくか』という心情に寄り添ったもの。3つ目は、ゲイでも女性を好きになれるようにシフトしていくのか、というトレヴァーの目線から見たものなど、様々な意味が混ざっています」
Q:心理学を学んでいたということですが、それは映画制作においてどのように生かされているのでしょうか。
監督「.脚本を書く際、キャラクターの心理に寄り添って書くことを意識しているので、その際に役に立っています」
Q:本作を通して、フィリピンは日本より性に関して寛容だと感じましたが、実際はいかがでしょうか。
監督「10年程前はフィリピンもまだ性に対して閉鎖的でした。私のリサーチによるとコールセンターという場所は、フィリピンの中でも独自のカルチャーを持っているので、ゲイやレズは非常に多いです。コールセンターでは国際的な多様性をもった人材を求めている為、ゲイやレズなどは関係なく採用を行っているという背景もあります。また、そのような場に集まる人は西洋の文化に触れてといる、オシャレな人が多いため、性に関して寛容です。実際私の友達も、コールセンターに入ってカミングアウトした人が何人もいます」
Q:本作の製作費・制作秘話、フィリピンの映画事情を教えてください。
監督「『SHIFT〜恋よりも強いミカタ〜』の製作費は200万円、撮影期間は6日間です。映画事情に関しては、まだメインストリームの作品を好む傾向にあります。一般的に客層は幅広いのですが、主なターゲットは女性、ゲイです」
(2014年10月17日付リリースより)
▼作品紹介
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