ダニエル・ヘニーが語るタダシと『ベイマックス』
−ダニエル・ヘニー(俳優)
12月20日より絶賛公開中のディズニー最新作『ベイマックス』。アメリカ映画ではありますが、日本アニメや文化に影響を受けたスタッフたちによる日本へのラブレターという側面もあり、日本やアジアの情緒を取り入れた作品となっています。その『ベイマックス』で、声優に挑戦したのが韓国ドラマ「春のワルツ」でおなじみのダニエル・ヘニー。『ラストスタンド』でハリウッド映画にも進出した彼ですが、今回は主人公ヒロの兄で、ケアロボット「ベイマックス」を作ったタダシという重要な役柄を演じています。また、本作のアニメーションは声優が決まってから作られたそうで、描かれているタダシのキャラクターはどことなくダニエル本人に似ています。そのダニエル・ヘニーへの公式インタビューが届きました。ダニエルが語る初めての声優体験とタダシ、そして『ベイマックス』への思いをご紹介します。
声優に挑戦したダニエル・ヘニー
Q:最初に『ベイマックス』の脚本を読んだとき、どういう部分が気に入りましたか?
ダニエル「実を言うと、最初は脚本をもらっていないんだ。声の出演の仕事が通常どういう進め方をするのかよく知らないけど、僕の場合はまず基本的な筋書のシノプシスをもらい、その上で監督とプロデューサーに会いに行くという形だった。その時点で、彼らから口頭でこの映画の設定やキャラクターについて説明を受けたんだ。僕はすぐに参加することにした。かなり熾烈なオーディションを経て、契約が決まった直後から始まったんだ。カリフォルニアから遠く離れた小さな街の出身で、小さい頃からずっとディズニーのファンだった僕にとって、これは夢の実現以外の何物でもない。複雑すぎることなく、革新的で、楽しくて、心にしみる、ものすごくよくできた映画であり、あらゆる世代の人々を正しい方向に導いてくれる。十分にポジティブなメッセージがあるね」
Q:オーディションのプロセスについて詳しく教えてください。また、この役を得たときの感想は?
ダニエル「オーディションのプロセスは熾烈だったけど、それと同時に、とてもやりがいのある楽しいものでもあったね。僕はこれまで、かなり長くテレビや映画の仕事をしてきたから、今では時々、役者としてある種のテクニック的なリズムに陥ってしまうことがあるんだ。でもこのオーディション・プロセスを通じて、僕がこの仕事を始めた頃にニューヨーク・シティの舞台で感じていた楽しさを思い出したよ。そういう意味で、とても自由になれた経験だったね。この役に決まったと連絡がきた時、最初は信じられなかったんだ。僕の記憶が正しければ、あの連絡がくるまで数週間が経っていたけど、普通はそんなにかかるものではないからね。だからもう諦めていたのに、ある日、連絡がきた。最高だったよ!」
Q:録音ブースの中は、どのような体験でしたか? 楽しめましたか、それとも違和感がありましたか?
ダニエル「心から楽しんだよ。先ほども言ったように、ニューヨークで即興や舞台をやっていた頃のことが鮮明に蘇ってきたんだ。ルールと呼べるものはほとんどなく、ドンとクリス(2人の監督)は、僕が演技者としてやろうとすることについては何でも信じられないほど協力的だったから。毎回録音セッションが終わる度に、僕のために時間を使ってくれたんだ。正直、こちらがお金を払いたいような気持になったね。まるでセラピーを受けているような気分だったから」
Q:あなたが演じたキャラクター、タダシについてお話しください。
ダニエル「タダシは若者だけど、本当の意味で本物の男なんだ。素晴らしい魂、親切で優しいハートの持ち主で、また、弟のタダシのことを心から想っている。彼とまだ幼かった弟に、ある悲劇的な出来事が起こり、それ以来タダシは弟の父親的存在になる。彼はヒロの「岩(のような堅固な支え)」であり、守護者であり、ロールモデルでもあるんだ。ヒロが危険性のある道を歩もうとしたとき、タダシはギリギリのところで彼の軌道修正をしている。タダシはまた、あの驚異的な才能を持つ若い発明家たちのグループを1つにまとめる存在でもある。タダシ自身とても才能ある発明家(ベイマックスを創り出したのは彼)なので、すべての仲間たちから尊敬されていて、彼らは、タダシにたいする友情や愛情があるからこそ、最終的に、ヒロにも同じような愛情を持つんだ」
ダニエルが演じたアニメーションのタダシ (c)2014 Disney
Q:あなたの韓国人の血筋についてお話しください。また、そういった経験がタダシの役作りのヒントになっていますか?
ダニエル「僕は韓国人とアイルランド人のハーフなんだ。ミシガン州の小さな農業の町で育った一人っ子だよ。僕自身、プライベートな過去の経験をタダシの役作りに積極的に取り入れたかどうかは、ちょっとわからないな。唯一言えるのは、アジア系アメリカ人の僕らは皆、共通の下地を共有していて、この国で育つにあたって、それぞれのアイデンティティについて似たような感覚や問題を経験しているということ。僕はいつもどこかけんか腰で、いつでも自分の人生において自分ができるはずだと思っていることを達成しようと情熱を燃やしている。他人から『ノー』と言われることが嫌いだし、特に自分が正しいと感じている場合、言い返さずに黙っていられる才能もないんだ。そういう部分では、タダシも似たような性格を共有していると確信しているよ」
Q:『ベイマックス』で一番気に入っているシーンは?
ダニエル「全部が大好きだよ。映画について、特に自分が出ている作品について、僕は普通こんなことは言わないんだ(笑)。でも、一番気に入っているシーンは、ベイマックスがあの新しい赤いスーツを着て、僕ら観客が彼の『スーパーヒーローとしてのポテンシャル』を最初に味わえるシーン。あのモンタージュ全体が本当に大好きなんだ。あのキャラクターの色々なパワーが見られるから。それに、ヒロがベイマックスと一緒にサンフランソウキョウ上空を、初めて『リアルに』フライトするシーン。とにかく素晴らしいね」
ヒロ役のライアン・ポッターとも兄弟みたい
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Q:アニメーションのキャラクターがご自分の声で話す姿を見るのはどのような気持ちですか?
ダニエル「シュールだよ。いい意味で奇妙だね。最初はなかなか頭で処理できないけど、2回3回と見ていると大丈夫になってきた。とにかく、僕の声の演技に皆が満足してくれることを願っているよ。ディズニー・ファミリーに参加できたことや、あのキャラクターとして永遠に残ることは、本当に栄誉だからね。僕は本当に幸運な男だよ」
Q:『ベイマックス』の他のキャラクターの声を演じられるとしたら、どのキャラクターを選びますか? その理由も含めて教えてください。
ダニエル「うーん…難しい質問だね。やっぱりベイマックスということになるかな。僕はベイマックスの声を演じたスコット・アツィットと一緒にあるインタビューを受けたんだ。その時とても興味深かったのは、彼が、どんなに大変な一日を送っていても、または、気分がすぐれない日でも、または、機嫌が悪い日でも、ベイマックスを演じるため仕事場にやってくると、ボイスオーバー・ルームから出てくる頃には、とても安らかで健全な気持ちになっていると言っていたこと。あれほど『ピュアで純真な』人物/物を演じられるのは本当に素晴らしいと感じると彼は言っていたんだ。僕も一度試してみたいと思ったね」
Q:あなたはディズニー・アニメーション映画のファンですか? 特にお気に入りの映画やキャラクターは?
ダニエル「もちろんファンだよ。たくさんのディズニーとピクサーの映画が大好きなんだ。『ダンボ』や『ピーターパン』から始まって、好きな作品のリストは延々と続くね。だけど、一番のお気に入りは2つまで絞り込めるかな。『ウォーリー』か『きつねと猟犬』。僕のこれまでの映画体験として選ぶなら『きつねと猟犬』ということになる。これを初めて観たとき、僕はまだとても小さかったけど、あのとき受けた印象は信じられないほど長く僕の心に残っているんだ。だけど、キャラクターで選ぶなら、やっぱり『ウォーリー』。あのかわいいロボットが大好きなんだ」
Q:人々が『ベイマックス』を観に映画館へ行くべき理由は?
ダニエル「この映画に込められているポジティブなメッセージについて、僕はいつまでも話し続けることができるよ。また、この映画の美しさや芸術作品として、その様相がいかに驚異的なものなのかについても、何日でも話すことができる。それから、キャスト陣の多様性や、あの素晴らしいキャラクターたちが、いかにユニークで他とは違い知性的なのかということについても、絶え間なく話し続けることもできる。だから、ここで本当に尋ねられるべき質問とその答えはコレだよ。「人々が『ベイマックス』を観に映画館へ行くべきではない理由は?」…そしてその答えは…僕には何一つ思い浮かばない。これは僕がこれまで観た中でベストな映画の1本なんだ」
(2014年12月に届いた公式インタビューより)
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