呉清源/極みの棋譜 (呉清源/The Go Master)
story
2004年、小田原。呉清源の自宅の庭で、90歳の呉清源と妻の和子、チャン・チェン、伊藤歩が談笑している。
1914年、中国の福健省で生まれた呉清源は、その後北京へ移り住み、7歳で囲碁を学び始める。天才少年と呼ばれた呉清源を、日本囲碁界の重鎮、瀬越憲作(柄本明)が日本へ呼ぶために尽力し、1928年に、呉清源は母(シルヴィア・チャン)と妹(ベティ・ホアン)と共に日本へ渡る。
1933年、19歳の呉清源(チャン・チェン)は、盟友・木谷実(仁科貴)と共に従来の常識を覆す「新布石」を提唱。昭和囲碁界に新風をもたらし、一大ブームを起こす。トーナメントで勝ち抜き、本因坊秀哉名人(井上堯之)への挑戦権を得た呉清源は、伝統を重んじる本因坊一門を激怒させる奇抜な打ち方をし、対局は日中決戦の色合いを深めていく。
1935年、精神的な支えだった西園寺公毅(米倉斉加年)が他界。呉清源は、救われがたい孤独に苛まれ、すべての試合を放棄して中国へ渡り、紅卍会に入信する。日本へ帰国した呉清源は、翌年の4月に日本国籍を取得。棋院の昇段試合では8戦全勝する。しかし、結核が再発し、富士見の療養所に入院。女流棋士の喜多文子(松坂慶子)や小説家の川端康成(野村宏伸)らが見舞いに訪れる。
1939年、秀哉名人が引退し、呉清源と木谷実は日本囲碁界の最強者となる。そして読売新聞が、両者による「打ち込み十番碁」を企画する…。
●アジコのおすすめポイント:
呉清源が日本へ渡ってから引退するまでの日々が、昭和の歴史と重ね合わせられ、美しい散文のように描かれていきます。ストーリーの流れよりも、呉清源の精神世界を重視したかったという監督。かなりの部分をカットしたそうで、ドラマチックなストーリー展開を期待する方には向きませんが、要所要所のドラマは描かれており、時代と共に揺れ動いていく呉清源の感情や喜怒哀楽が伝わってきます。見事に再現された昭和の佇まい、日本ならではの風情など、日本人には味わい深い作品となっています。初対面で起用したというチャン・チェンは、若き日の呉清源に瓜二つだそうです。
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