ラスト、コーション(色,戒/Lust, Caution)
story
雀卓を囲む女性たちが、他愛のない自慢話を繰り広げている。イー夫人(ジョアン・チェン)を中心に、マー夫人(シュー・イェン)、リャン夫人(リュウ・ジェー)、そしてひと際若く繊細なマイ夫人(タン・ウェイ)の4人だ。帰宅したイー(トニー・レオン)が顔をのぞかせると、マイ夫人は急用があったことを思い出し、イー邸を後にした。
カフェの窓際の席に座り、珈琲を注文するマイ夫人。カウンターで電話を借り、呼び鈴を2度鳴らして電話を切った後、再び電話をかけなおすと、クァン・ユイミン(ワン・リーホン)の声が聞こえてきた。マイ夫人は席に戻り、往来を見つめながら、数年前の出来事を思い返していた。
1938年、中国。日本軍の侵攻から逃れ、香港に集団移住した女学生ワン・チアチー(タン・ウェイ)は、親友に誘われて香港大学の演劇部に入部する。強い信念と志を持つレジスタンス派の学生クァン・ユイミンに惹かれたからだ。看板女優となったチアチーは、演じることへの高揚感と共に、クァンの思想に傾倒していった。
クァンは、日本傀儡政権スパイのトップであるイーの元で働いているツァオ(チン・ガーロウ)と再会したことから、イーの暗殺を思いつき、演劇仲間5人を計画に誘う。色男として知られるイーに、チアチーがマイ夫人となって近づき、おびき出した彼を仲間が暗殺するという計画だった。
後日、イー夫人に紹介されたチアチーは夫人に気に入られ、イーに近づくことに成功する。しかし、後一歩というところでイーたちが上海へ戻ってしまい、計画は頓挫。捨身になってその時に備えたチアチーだったが、事態を察してやって来たツァオをクァンが殺害する光景にショックを受け、アジトから走り去って行く。
1942年、日本占領下の上海。チアチーは叔母の家に身を寄せ、父のいるイギリスへ渡ることを夢見て、勉強を続けていた。そんなある日、本格的なレジスタンス活動家となったクァンと再会し、「あの計画はまだ終っていない」と告げられる。組織のボス、ウー(トゥオ・ツォンホワ)にも説得され、プロの女スパイの訓練を受けたチアチーは、再びマイ夫人となってイーの前に現れる…。
●アジコのおすすめポイント:
大胆なベッドシーンが話題となっていますが、それ以上に、丁寧に描き込まれたキャラクターの心理描写が印象に残ります。映画をご覧になった後で、原作の短編小説を読むと、その違いがよくわかるでしょう。発端から結末に至るまでのヒロインの心の軌跡、彼女を取り巻く2人の男たちの心理がせつなく、深い余韻を残す物語です。アン・リー監督の手腕もさすがですが、まさに体当たりで迫真の演技を見せたトニー・レオン&タン・ウェイ、そして俳優としても成長したワン・リーホンも見どころです。美術や音楽もマル。
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