1978年、冬。
（西干道/The Western Trunk Line）
story
1978年冬、中国北部の小さな町西幹道。通勤と通学の人々を運ぶ通勤列車が、凍てつく空の下をいつものように走っている。坊主頭で俯きがちな男の子、ファントウ（チャン・トンファン）は11歳。近くの小学校へ通う彼は、内気で人見知りなため、よくいじめられていた。しかし、絵を描くのが好きで、授業中も下校後も、時には原っぱのドラム缶を机にして、壁に思い浮かぶまま絵を描いていた。
ファントウの父（ヤン・シンピン）は無口な軍医。何か問題が起こっても深い眼差しで子供たちを見守っているが、母（チャオ・ハイイエン）は子どもたちを厳しく管理していた。18歳の兄スーピン（リー・チエ）は近くの工場に勤めているが、仕事をさぼっては、廃墟のビルにある秘密の場所に隠れ、遠い海外のラジオから流れる音楽を聴いていた。遠い世界に憧れる彼は、皆とは違う世界を持っていたのだ。
ある日、家族で見に行った舞台公演で、兄弟はシュエン（シェン・チアニー）の踊る姿を見て、密かな憧れを抱く。北京から来たシュエンは、目の前の家に住んでいた。スーピンはなんとか彼女に近づこうと、彼女が出した手紙をポストから抜き出す。中には離れて暮らす父親への手紙と仕送りが入っていた。そのことがきっかけで、二人は紆余曲折しながらも距離を縮めていき、スーピンの秘密の場所で時間を過ごすようになっていく。
一方ファントウは、ひとりで絵を描いている時に、シュエンから「展覧会が開ける」と言われて舞い上がっていた。スーピンは文芸団員になったと父親へ偽りの手紙を書いたシュエンの為、手作りの衣装を用意して、踊っている彼女の写真を撮って送る事を思いつく。しかし、そんな努力も空しく、シュエンの父親が亡くなってしまう。そして、ファントウはスーピンとシュエンの密会の場を覗いてしまう…。
●アジコのおすすめポイント：
ちょっと歳の離れた兄弟が、都会からやってきた美しい少女に心惹かれ、それぞれの関係を築いていく様子を、鉄道の走る田舎町を背景に美しく丁寧に描いた作品です。凍てついた冬の荒涼とした大地と線路、並木道などが印象的で、そこで繰り広げられる大小の人間ドラマや葛藤を大きく包み込んでいます。兄と弟、そして彼女の運命がどうなっていくのか、じっくりとご堪能ください。
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