東京国際映画祭にも
やって来ます。
−フォ・ジェンチイ(霍健起) 監督
Q1:本作を撮ろうと思ったきっかけを教えてください。
監督「8年ほど前に読んだ、新聞の連載コラムがきっかけです。恋愛体験や結婚について一般の方の体験談が載っているコラムなのですが、そこに本作のモデルとなるエピソードが書かれており、琴線に触れたことを覚えています。その後数年経ち、次の映画の話になった時にこの話を思い出し、映画化しようと思いました。
2人が自分たちを『ロミオとジュリエット』に重ねたこともコラムに書かれた事実であり、彼らは本当に『ロミオとジュリエット』を支えにして、長い間愛情を貫いたんですね。そして、お互いを励ますためにこの作品に関するいろいろなものを集めて、耐え忍んでいたのです。あの時代の人たちですら愛を通したわけですから、自分たちに出来ないことはない、と長い間愛を貫いた事実には非常に感動しました」
Q2:本作の設定である80年代の雰囲気を出すために一番こだわったところはどういったところでしょうか?
監督「一番こだわったのは、服装や小道具ですね。例えばホウ・ジア(ルー・イー)の母親がコップを包むコップカバーを編んでいるシーンがあるのですが、80年代はみんなそういう小物を自分で編んでいたんですね。そういった当時の小道具や習慣には非常にこだわりました。きっとあの時代を知っている人にとってはすごく懐かしいだろうし、若い人たちにとっては新鮮に写ると思います」
Q3:主演であるヴィッキー・チャオとルー・イーを起用したきっかけを教えてください。
監督「中国の業界人が集まるパーティに出席した時、ちょうどヴィッキー・チャオとルー・イーがラブソングをデュエットしていたんです。その時、ヴィッキーがルーの肩に寄り添って歌っているのを見て、とてもお似合いだなと思ったんですね。そして本作は観ている人が2人を、美男美女が結ばれないという悲劇である『ロミオとジュリエット』に投影してこそ成り立つ作品だと思いましたので、美男美女で演技ができるこの2人の起用を決めました」
Q4:2人の演技からは、当時の恥じらいやもどかしさがとても伝わってきましたが、監督は2人にどういった演技指導をされたのでしょうか?
監督「この映画は、最初は淡くほのかな恋心が、だんだん愛という確かなものに変化していく過程を描いているので、役者たちの心の演技が非常に重要でした。例えば、アイスクリームを食べながら自転車で2人乗りをしている時のまだ愛とは言えないような感情が、自転車の乗り方を教えたりしていく内にだんだんと距離が縮まっていき、変化していくというシーンがあるのですが、その中で一つひとつの細かな動作をすべて考え、指導しました。そういった設定をすることで、2人には気持ちの部分を表現してもらいました。
特にヴィッキー・チャオは、今までの活発なイメージとは異なる、自分が演じたことのないような役を演じることで別の一面を表現したいと思っていたようです。そういう意味で、この映画は彼女にとっても非常に大きな収穫のあった作品だったと思います」
Q5:今回の作品も詩情に満ちた映像美がいき渡っていましたが、監督のお気に入りのシーンはどこですか?
監督「たくさんあるのですが、あえて挙げるのであれば、ライラックの花の海の中を2人が自転車で走るシーンとか、葉っぱの映像越しに2人がロミオとジュリエットのせりふを読むところとか。数え切れないくらいたくさんあります」
Q6:観る人によって様々なとらえ方ができるラストシーンでしたが、あのように描いた理由を教えてください。
監督「長い月日が経ち、最後の最後で一緒になれるという2人の気持ちはどういうものなのか、と想像したんですね。それは喜びなのかそれとも悲しみなのか、と。例えば、オリンピックで金メダルを取った選手は、嬉しくて笑うべきところなのに思わず泣いてしまいますよね。それは、長い年月の間にどれだけ犠牲を払って生きてきたかと考えたとき、本人も観ている方も非常に胸に迫るものがあるからだと思うのです。なので、そういった複雑な心理状態を描くには、あのラストがベストだと思ってそう描きました」
Q7:次回作について教えていただけますか。
監督「定年退職を迎えた工場労働者が、山西省太原を舞台にふるさとに貢献しようとする話で、ごくごく普通の人がちょっと偉大なことをするというドラマです。すでに撮影は終わり、現在ポスプロ中です」
Q8:今年の東京国際映画祭審査委員長をお務めになるとお聞きしましたが、現在のご心境を教えていただけますか。
監督「東京国際映画祭は、03年に『故郷の香り』(グランプリ・主演男優賞受賞)で名誉ある賞を頂くなど、とても縁が深い映画祭だと感じています。そういった映画祭で審査委員を務めることはとても光栄に思っています」
Q9:では、最後に映画をご覧になる皆さまにメッセージをお願いいたします。
監督「時代がどんなに変化しても、純粋な愛情は人に幸せをもたらすものだと思います。特に今の若い人に愛を信じてもらいたいと思い、この映画を撮りました。物質的に豊かになった時代でも愛が大事なんだよ、ということを感じていただければと思います」
(公式インタビュー:2008年9月11日 ブロードメディア・スタジオ 月島オフィス)
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