嘆きのピエタ(Pieta)
story
生まれてから30年、イ・ガンド(イ・ジョンジン)は親の顔も知らず、天涯孤独に生きてきた。債務者に重傷を負わせ、その保険金で、利子が10倍も膨らんだ借金を返済させる、血も涙もない借金取立て屋が彼の生業だ。
そんなガンドの前に、ある日、母と名乗る謎の女(チョ・ミンス)が現れる。ガンドは信じず、彼女を邪険に追い払うが、女は執拗にガンドの後を追い、アパートのドアの前に生きたウナギを置いていく。ウナギの首には「チャン・ミソン」という名前と携帯電話番号が書かれたカードが括り付けられていた。
水槽で泳ぐウナギを見つめ、躊躇いつつも、ガンドは女に電話する。すると、子守唄が聴こえてきた。ドアを開けると、そこには涙を浮かべながら歌う女が佇んでいた。
「母親の証拠を出せ」と詰め寄るガンドの残酷な仕打ちに耐え、彼から離れようとしないミソンを、ガンドは徐々に母親として受け入れていく。街角で幼い子供のように風船で遊ぶガンド。いつしかミソンは、ガンドにとってかけがえのない存在となっていく。
母の愛を知ったガンドが、取り立て屋から足を洗おうとした矢先、ミソンが突如姿を消す…。
●アジコのおすすめポイント:
独自の作品世界で世界を唸らせてきたキム・ギドク監督。 『悲夢』の後、一時期、絶望して隠遁生活を送っていましたが、一昨年の『アリラン』で暗闇から抜け出し、満を持して生み出されたのが本作です。そこにはもはや迷いがなく、自由な表現者としてのパッションがさらに洗練され、誰にでもわかりやすいメッセージを持った作品として結晶したのでした。ヴェネチアでの成功が韓国国内でも前向きに評価され、監督作としては異例の国内ヒットを達成。さらに多数の映画賞受賞と、長年苦渋を嘗めてきた監督にとって、母国で認められたことは、やはりうれしい出来事だったのではないでしょうか。
出色なのは、なんといっても主演の二人。韓流ドラマでもお馴染みのナイスガイ、イ・ジョンジンがなんと冷酷で無慈悲な借金取立て屋に扮し、黙々と仕事を遂行していく前半。それが、思いがけない母の出現によって揺れ動き、受け入れ、愛を求める男に変貌していきます。その母に扮するのは、美しきベテラン女優のチョ・ミンス。強い思いを秘めた謎の女を見事に演じ、最後に吐露する慈悲の言葉に胸打たれます。象徴的なラストシーンまで目が離せない、至高のサスペンスドラマです。ご堪能あれ。
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