ラスト・シャンハイ(大上海/The Last Tycoon)
story
1930年代の上海。街の大物となったチェン・ダーチー(チョウ・ユンファ)は、京劇の舞台を遠くから眺めながら、上海に出て来る前の若き日々を思い出していた。
1913年。江蘇州の果物店で働くダーチー(ホアン・シャオミン)は、京劇のイエ師匠の娘ジーチウ(ジョイス・フォン)に熱い想いを寄せていた。ダーチーの夢は上海で大物になること。ジーチウの夢は北京で京劇を学び、いつか男役を演じること。ダーチーは「めどがついたらきっと迎えに行く」とジーチウに約束する。
ところが、店主殺しの濡れ衣を着せられたダーチーは、死刑囚の牢屋に入れられ、軍人のマオ・ツァイ(フランシス・ン)と出会う。彼のおかげでダーチーは命拾いをするが、ジーチウはすでに家族と共に北京へ旅立っていた。残された写真には「いつか会いに来て」と書かれていた。ダーチーはシャオファンと共に上海へ出て、上海一のナイトクラブ「大上海」の摩天楼を見上げ、「いつかあそこに登ってやる」と夢を膨らませる。
1937年。「大上海」では、ダーチーを出世に導いたホン(サモ・ハン)の還暦祝いが行われていた。そこへ、国民党の将軍となったマオが現れる。久しぶりにダーチー(チョウ・ユンファ)と再会したマオは、北京から来たチェン(シン・バイチン)に近づいてリストを入手して欲しいと頼む。チェンは地下組織の人間らしい。そして、彼の妻は京劇スターとなったジーチウ(ヨランダ・ユアン)だった。
帰り道、ダーチーが乗るエレベーターに、偶然、チェン夫妻が乗り合わせる。再会した2人はすぐにお互いに気づき、動揺する。帰宅後、ジーチウが唱う京劇のレコードを聴くダーチー。電話機から聞こえるその音を聴いた妻のアーバオ(モニカ・モク)は、自分がダーチーと初めて出会った1914年のことを思い起す…。
●アジコのおすすめポイント:
香港コメディを量産してきたウォン・チン監督が、アンドリュー・ラウ監督の製作・撮影のもと、がっつりとシリアスな歴史大作に挑んだ作品です。しかも、基調となるのは重層的なラブ・ストーリー。1930年代の上海が舞台ですが、ギャングアクションというよりは、黒社会といえども市井の人々と同じく、激動する歴史の渦に巻き込まれていく姿を描いています。主人公は、若い頃に夢を語り合い将来を誓った男女。しかし、男は運命のいたずらで黒社会に染まり、女は恐れをなして逃げていく。失望した男を支えたのは、彼を心から愛したもう一人の女。そんな彼らが中年となり、思いがけない再会を経て、新たなドラマが展開していきます。上海事変当時が背景なので、日本軍の影響も大きく、軍人役で倉田保昭も登場。日本軍に加勢する狡猾な国民党の将軍をフランシス・ンが巧みに演じています。そして、主人公のダーチーを演じるチョウ・ユンファとホアン・シャオミン(青年時代)のダブルキャストにも注目。お互いを意識して演じたのか、ホアン・シャオミンは最初からチョウ・ユンファぽく見える(特に口の辺り)し、チョウ・ユンファも北京語吹替がホアン・シャオミンだけに違和感ありません。(ちなみに広東語版は逆)親友役の太っちょさん(クレジット捜索中)もいい味を出しています。そしてラストシーンは、名曲「定風波」と共に強く印象に残ることでしょう。
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