セデック・バレの真実
(餘生−賽徳克・巴莱/Pusu Qhuni)
story
セデック族の末裔パワン・ナウイは、山を歩きながら、息子のバガハとナウイに祖先の物語を語って聞かせる。そして、民族の誇りを次の世代へ伝え、再び繁栄することを願って、民族発祥の地・伝説の巨岩プスクニを探す旅に出る。
マホン・パワンの曾祖父はセデック族の英雄、モーナ・ルダオだ。祖母マホン・モーナの名前を受け継いだが、長い間、民族の話を避けてきた。名前も重荷だった。だが、今は中亜研究所で他民族との比較研究をテーマにしている。そして、両親から祖母マホンの過酷な生涯の話を聞く。
霧社事件記念公演でガイドをしているタダオ・ナウイは、花岡二郎の妻、高山初子(オビン・タダオ)の孫にあたる。霧社事件の後、1200人から289人に激減したセデック族は、川中島(今の清流)に移住させられる。
清流にある餘生記念館には、様々なスタイルの墓碑が混在している。マヘボ社の副頭目モーナ・シネの子孫で教師のダッキス・パワンは、民族の歴史を記録するために、大勢のセデック族が集団自決したマヘボ渓谷を訪れる。
事件当時、花岡一郎と二郎が首謀者にされてしまったこと、花岡一郎夫妻と二郎の葛藤と悲劇、モーナ・ルダオの名誉回復運動から、行方不明になっていた遺体の顛末などが、遺族や研究者から語られていく。
●アジコのおすすめポイント:
『セデック・バレ』ファンには必見のドキュメンタリー登場です。監督は映画で録音を担当していたタン・シャンチー。ウェイ・ダーション監督は製作を担当しています。原題の「餘生」とは「生き残った人々」のこと。霧社事件の遺族とその親族や子孫から語られる真実は、まさに映画で描かれていたストーリーと、その後の苦労を伝えており、特に花岡兄弟(実の兄弟ではない)のエピソードでは、映画と同じく泣かされます。また老人たちが話す、日本語混じりのセデック語や中国語も印象的。カメラは日本へも飛び、木村祐一が演じた佐塚愛佑の甥にも取材しています。歴史の証言と共に綴られるのが、民族発祥の地・プスクニを訪ねる旅。広大な山脈の尾根づたいに歩くのは、モーナ・ルダオの父親ルダオ・ルヘを演じていたパワン・ナウイと息子たち。水鹿がいる祖先の地を歩く彼らは、民族の未来へと繋がっています。
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