マルティニークからの祈り
(家へ帰る道/Way Back Home)
story
平凡な主婦のジョンヨン(チョン・ドヨン)は、愛らしい娘ヘリン(カン・ジウ)、ちょっと頼りないが優しい夫ジョンベ(コ・ス)と3人で、裕福ではないが幸せな毎日を送っていた。だが、ジョンベの友人が6億ウォンもの負債を抱えたまま自殺。2億ウォンの保証人になっていたジョンベは、家族と共に部屋を追い出されてしまう。
窮地に陥ったジョンベに、長年の友人ムンド(チェ・ミンチョル)が「金の原石をフランスに持ち込むだけで大金が稼げる。万一、ばれても罰金を払うだけ」と持ちかける。さらに「これは女にしかできない仕事」と告げられ、ジョンベは気が進まないが、ジョンヨンは夫とムンドの言葉を信じて荷物を運ぶ決意をする。
2004年10月30日。フランスのオルリー国際空港で、ジョンヨンは逮捕される。彼女が運んでいた荷物の中身は金の原石ではなく、大量のコカインだったのだ。ムンドは逃亡し、共犯の女も釈放されるが、フランス語はおろか英語もしゃべれないジョンヨンは拘束され続ける。
韓国では妻の逮捕を知ったジョンベが激怒。ムンドが指名手配中のワルだったと知り呆然とする。大使館に何度もジョンヨンの無実を訴えて通い詰めるが、全く相手にされない。一方、収監されていたジョンヨンは3ヶ月後、カリブ海に浮かぶ島マルティニークのデュコ刑務所に移送される。ここでの生活は過酷なものだった。
大使館の対応や検察の捜査にしびれを切らしたジョンベが単独で動きだした頃、ムンドが逮捕されるのだが…。
●アジコのおすすめポイント:
社会告発ものに秀作が多い韓国ですが、本作も2004年10月30日に実際に起こった事件を元に描かれています。この逮捕された主婦が経験した約2年間の過酷な日々は、2006年に放送されたドキュメンタリー「追跡60分」で明らかになり、世論を大きく動かしました。無知と愚かさから罪を犯してしまったとはいえ、大使館の怠慢と通訳がいなかったせいで、不当に長い間、家族と切り離されてしまった彼女の日々がリアルに綴られます。監督は『オーロラ姫』『容疑者X 天才数学者のアリバイ』で注目された女性監督パン・ウンジン。主人公の主婦を演技派のチョン・ドヨン、人のいい夫をコ・スが自然体で演じています。フランスやドミニカ共和国で大掛かりなロケを行って撮影された本作。風光明媚なマルティニーク島にある女性刑務所の様子や、国際犯罪事件における大使館の役割、人々を動かす韓国のネット社会と、興味深い内容がいっぱいです。
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