レッド・ファミリー(赤い家族/Red Family)
story
北朝鮮との境界線近くにある焼肉レストランのテラス席。威厳のある祖父に、優しい夫、貞淑な妻、そしてかわいい娘が食事している。礼儀正しく目上を敬い、仲睦まじく微笑んで食事する一家に、隣席の家族連れは羨ましそうだ。だが、彼らの正体は北朝鮮のスパイ「ツツジ班」。付近にある韓国の軍事施設を撮影するのが任務だった。
家に帰ってドアを閉めると、この家族の様子は一変する。妻役のペク班長(キム・ユミ)は、鬼の形相で祖父役のミョンシク(ソン・ビョンホ)と夫役のジェホン(チョン・ウ)の失敗を叱責する。夕食の席で、娘役のミンジ(パク・ソヨン)が「朝鮮にいる妹より贅沢だ」と箸を止めると、健康を保つことも任務のうちと班長が叱るのだった。
隣の家からは、毎日のように怒鳴り合う声が聞こえてくる。自己中心的な夫(パク・ビョンウン)と料理一つ作れない浪費家の妻(カン・ウンジン)、そんな両親にうんざりしている息子のチャンス(オ・ジェム)。祖母(カン・ドウン)は嘆いてばかりいる。お隣の家族は、どうしようもないダメ家族だった。
ツツジ班の行動は常に監視されており、ときには脱北者の暗殺命令が下ることも。祖国に残した家族のために、4人は身も心もギリギリになりながら生活していた。ミョンシクは癌を患っていたが、仲間には隠していた。しかし、偶然が重なり隣家の祖母と親しくなっていく。
そんなある日、4人は隣家の祖母の誕生パーティに招かれる…。
●アジコのおすすめポイント:
キム・ギドク監督が『プンサンケ』に続いて南北問題に関する脚本を書き、それを新鋭のイ・ジュヒョン監督が長編デビュー作として完成させた作品です。潜入スパイものは数あれど、家族ぐるみというのが本作のミソ。お隣りのダメ人間だけど愛すべき家族との交流がきっかけとなり、自分たちの対照的な日常や任務に疲れ、互いを思いやるようになっていきます。しかし、そんな彼らを待ち受けていたのは非情な命令。果たして、彼らの決断は…? 結末に希望を残しますが、観客に解釈を委ねるこのシーンは、脚本通りではなく監督のオリジナルだそうです。北朝鮮が新体制になったことで、潜入していたスパイたちの命運にも変化がありそう。このあたりの事情は、10/11から公開の『シークレット・ミッション』でも描かれています。
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