サイの季節(Rhino Season)
story
1977年、王制下イランのテヘラン。詩集「サイの最後の詩」で成功をおさめた詩人サヘル・ファルザン(カネル・シンドルク)は、美しい妻ミナ(モニカ・ベルッチ)と幸せな日々を過ごしていた。一方、ミナの家の運転手アクバル(ユルマズ・エルドガン)は秘かにミナへ想いを寄せており、絶望と嫉妬に苛まれていた。
1979年、イラン・イスラム革命が勃発。反体制的な詩を書いたとして、サヘルはミナと共に逮捕され禁固30年、ミナは禁固10年の刑を受ける。密告したのはアクバルだった。ミナに執着するアクバルは権力を利用して、さらに卑劣な行為におよぶ。
10年後、ミナは獄中で産んだ双子の子どもと共に釈放される。夫の死を告げられ、墓の前で泣き叫ぶミナの前に、アクバルが現れる。
2009年、イラン。30年の刑期を終えてサヘル(ベヘルーズ・ヴォスギー)が釈放された。存在を抹消されていることを知ったサヘルは、最愛の妻ミナと再会したい一心で居場所を探り、トルコへ移住したという情報を得てイスタンブールへ旅立つ。
2010年、イスタンブール。サヘルは海辺の家で子どもたちと暮らすミナを見つけるが、すぐに近づくことができない。また、ミナの周りにはアクバルの影が今もつきまとっていた。距離を保ちながら、ミナの行動を観察するサヘルは、偶然に若い2人の娼婦と知り合う…。
●アジコのおすすめポイント:
『酔っぱらった馬の時間』(2000)で注目され、国際的に高い評価を受けながらも、ゲリラ撮影を行った『ペルシャ猫を誰も知らない』(09年)によって国を追われ、亡命生活を続けているバフマン・ゴバディ監督が、自身の心象風景を詩人の運命に重ね合わせてトルコで撮影した作品です。自分のルーツや愛する人々から切り離され、孤独と混乱の中で自分を圧倒させた感覚を、主人公のサヘルに託し、彼の運命を見つめることで、監督自身は再生することができたのだそうです。ストーリーは決して難解ではありませんが、様々なイメージが登場するアートフィルム的手法が用いられ、サビ色の映像美に圧倒されます。本作で俳優復帰したというベヘルーズ・ヴォスギーの渋い魅力、30年後のミナまで演じたモニカ・ベルッチの女優魂も味わえる作品です。
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