カンフー・ジャングル
(一個人的武林/Kung Fu Jungle)
story
南拳王と呼ばれる洪拳の武術家がトンネルで殺された。遺体にはナイフや拳銃の痕跡がなく、拳で殴り殺されたと推定される。凶悪事件捜査本部のロク・ユンサム警部(チャーリー・ヤン)は、死因に不審を抱きながら捜査を始める。一方、刑務所でこの事件を知った服役中のハーハウ・モウ(ドニー・イェン)は動揺する。
ハーハウはかつて警察の武術教官をしていたが、無謀な私的試合で過って相手を殺してしまい自首。模範囚として服役していた。だが、ロク警部に会うため、刑務所内で乱闘騒ぎを起こす。やむなく面会に来たロク警部に、ハーハウは即時仮釈放を条件に捜査協力を申し出る。
最初は取り合わなかったロクだが、ハーハウの言った通りに事件が起こり、彼を仮釈放させる。「まず南拳王、次に北腿王、そして擒拿王、武器王と…」ハーハウは、この犯罪の目的は恨みではなく、これからも事件が続くと断言。予言通り、武術界のチャンピオンたちが、自身の得意とする武術によって、次々と殺害されていく。
捜査の途中、ハーハウは警察の監視をすり抜け、自分の出身地である佛山へ戻る。そこには、合一門派の妹弟子で許嫁のシン・イン(ミシェル・バイ)が彼の帰りを待っていた。ハーハウは、武術館を支えるインにも危険が及ぶと心配していた。しかし、ハーハウの後を追って来たロク警部の計らいで、インもハーハウに同行することになる。
そして、犯人が現場に必ず残す武器「堂前の燕」のレプリカから、癌の妻を連れて大陸からやって来たフォン・ユィシウ(ワン・バオチャン)が容疑者として浮かびあがる…。
●アジコのおすすめポイント:
「武術」の世界で起こる事件をサスペンスタッチで描いた新感覚カンフーアクションです。監督は『孫文の義子団』のテディ・チャン。「武林」を主題にしたカンフー映画の脚本を書いているうちに、カンフー映画ブームが来てしまい、やむなく脚本を現代劇にすることに。そのおかげで、刑事サスペンスとカンフーが融合する、香港ならではの斬新なアクション作品が誕生したのでした。さらに本作は、監督が長年携わってきたアクションやカンフー映画界に敬意を捧げた作品。往年のアクションスターをはじめ、アクション系の監督やスタッフたちが映画の随所に登場します。主演のドニーさんはちょっと丸くなってますが、アクションのキレは健在。敵役のワン・バオチャンにもびっくり。なんと少林寺出身だそうで、次々と達人を倒し、ドニーと互角に闘う狂気の男を怪演しています。武林に生きる男たちの悲しい性を描く本作、アクションもドラマも堪能できる背筋の通った作品です。このような映画を作ったテディ・チャン監督にも、敬意を表したいと思います。
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