最愛の子(親愛的/Dearest)
story
2009年7月18日。深[土川]。下町でネットカフェを経営するティエン(ホアン・ボー)には3歳の息子ボンボン(チョウ・ピンルイ)がいる。この日は週に一度、離婚した元妻ジュアン(ハオ・レイ)に預ける日。母の車で戻って来たボンボンは、近所の子どもたちと遊びにでかける。その時、母の車を見かけたボンボンは後を追うが、母は気づかない。立ち尽くすボンボンを何者かが抱きかかえて連れ去った。
夜になってもボンボンは戻らない。ティエンは警察に捜索願を出そうとするが、失踪後24時間は事件として扱えないという。その後、防犯カメラにボンボンが連れ去られた映像が見つかる。その日から、ティエンとジュアンの息子探しが始まった。インターネットで情報提供を呼びかけるが、報奨金目当ての詐欺やいたずら電話ばかりだ。
ティエンは焦燥するジュアンを「行方不明児を捜す会」の交流会に連れて行き、様々な人たちと悲しみを分かち合う。中心となっているのは、同じく子どもを捜しているハン(チャン・イー)と妻(キティ・チャン)だ。3年後、ティエンの元に有力な情報が届く。安徽省の農村を訪れたティエンとジュアンは、ついにボンボン(チュウ・ジーモウ)を見つけて奪い返す。
家にいたリー・ホンチン(ヴィッキー・チャオ)は、息子ジーガンが連れ去られるのを見て「人さらいだ!」と叫ぶ。大騒動の果て、ホンチンは警察署に連行され驚きの事実を知らされる。昨年病死した夫は誘拐犯だったのだ。他の女に産ませた子と信じて育てて来たホンチンの元には、もう一人の娘ジーファン(リー・イーチン)がいた。「この子は夫が拾った子」と主張するが、ジーファンも保護されてしまう。
半年後、ホンチンはジーファンに会うため、深[土川]の児童養護施設を訪れるが面会を拒否される。翌日、弁護士事務所を訪れたホンチンは、下っ端の弁護士カオ(トン・ダーウェイ)に娘を取り戻すための相談を始める…。
●アジコのおすすめポイント:
この事件のドキュメンタリーを見たピーター・チャン監督が即映画化を決意したという渾身作です。ウェルメイドな人間ドラマを描き続けてきた監督ならではの視点が生かされ、前半は被害者たち、後半は加害者の妻の立場から、それぞれの苦悩と奮闘を描いています。この難しい役柄を見事に演じたのは、ヴィッキー・チャオと人気俳優のホアン・ボー。特にヴィッキーはノーメイクで田舎の無知な女を好演。後半には監督による創作も加味され、「親子とは何か?」を深く問いかけるエンディングとなっています。またラストでは、物語のモデルとなった本人たちのその後もご覧になれます。最後までじっくりと味わってください。尚、本作は社会的な反響も巻き起こし、公開後に刑法が改正され、子どもや女性の誘拐や売買が厳罰化されています。
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