ユートピア(同流合鳥/Utopians)
story
ヒンズ(アドニス)は香港の大学生。夜毎、全裸の自分が仮面の男女にムチ打たれるという淫らな夢に悩まされている。ガールフレンドのジョイ(フィオナ・ウォン)は三島由紀夫の小説ばかり読んでいるからだと言う。「仮面の告白」を読み終えたヒンズは「暁の寺」を持ち歩いていた。
大学に新しい教授がやって来た。古代ギリシャ文学とユートピアを研究しているミン(ジャッキー・チョウ)は、自分が裸の男と絡んでいる大きな写真を見せ、自分はゲイだと宣言。生徒たちを驚かせる。敬虔なカトリックのジョイは不快感を露にして退席するが、ヒンズは淡い興味を感じていた。
授業の後、ヒンズはジョイの態度を謝りにミンの部屋を訪れる。三島由紀夫の本を愛読するヒンズに、ミンも興味を抱く。その夜、母親(シュイ・ジェ)と食事をした後、バーでアルバイトをしていたヒンズは、スワン(モー・チン)という女性と知り合う。彼女はジョイの前にも現れ、ヒンズのことで悩む彼女に「恋敵は異性の方がいい」と慰める。
スワンはミンの助手だった。ヒンズはミンにクルージングに誘われ喜んででかけるが、船にはたくさんの若い男女が乗り込んでおり、ミンの乱交ぶりに困惑。翌日、ジョイの部屋を訪れると、そこにも裸の男がいて動揺する。ヒンズに嫉妬させるため、ジョイがわざと従兄弟に頼んでいたのだ。そんなジョイにミンは愛の共有を説く…。
●アジコのおすすめポイント:
香港のインディーズ映画界で異彩を放っているスカッド監督の最新作です。前作『ボヤージュ』は「うつ病」をテーマに様々なエピソードがオムニバス的に綴られた作品でしたが、今回はいたってシンプルな愛のお話。もしも、自分の恋人が同性愛(または両性愛)になってしまったら?という視点で観ると面白いでしょう。ゲイをテーマにした三角関係のせつない作品はたくさんありますが、スカッド監督の作品が一味違うのは、オープンで明るく潔いところ。今回も古代ローマの浴場のように、自然光の中で、裸の男女が登場しますが不思議とエロくありません。主人公を演じるのは、本作が長編映画デビューとなったアドニス、ことアドニス・ハー(賀飛)。中国の俳優兼モデルさんで、多数のテレビドラマにも出演歴あり。大胆デビューとなった本作で、写真集も発売されています。後半には意外な展開が待っていますが、その時の弁護人役でウォン・ヘイ(王喜)が出演しています。
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