西部戦線1953
(西部戦線/The Long Way Home)
story
朝鮮戦争が始まって3年目の1953年7月、韓国軍では大量の機密文書が作られ、指示された場所へ届けられようとしていた。「文書をなくしたら銃殺だ」そう命じられ、伝令のチョン・ナムボク(ソル・ギョング)は部隊と任地へ向かう。ところが、銃撃戦となり部隊は全滅。ナムボク一人が生き延びるが、文書を紛失していた。
北朝鮮の人民解放軍で戦車の機関銃手を務める坊や、ことキム・ヨングァン(ヨ・ジング)は真面目な高校生。戦車が故障して小休止中、食糧調達を命じられる。ところが、空爆に巻き込まれ、命からがら部隊に戻ると部隊も全滅。戦車だけが残っていた。上官は「戦車を捨てて逃げれば銃殺だ」と命じて息絶える。
再び爆撃に遭い、山道へ逃げ込んだヨングァンは、落ちていた秘密文書を拾い、探しに来たナムボクとも遭遇してしまう。戦車に逃げ込み、教本を見ながら戦車を走らせるヨングァン。デタラメに発射した砲弾は、近くに駐屯していた韓国軍へと飛んでいった。それは伝令を待っていた部隊だ。
ヨングァンとナムボクは、大砲とバズーカ砲で一騎討ちに。戦車は大砲の鼻が折れ、ナムボクは瓦礫に埋もれる。その後、ナムボクは中国兵に化けて近づき、なんとか戦車に乗り込むが、なかなか勝負がつかず、戦車は北と南を行ったり来たり。親切な村で食糧をもらうが、ついに撃ち合いとなり二人とも負傷。しばし休戦することに。
互いの傷の手当てをし、一緒にまむし酒を飲んだり、近くの川で魚を捕ったり。初恋の人と祖母を置いて従軍したヨングァン。やっと結婚し、生まれたばかりの息子に名前をつける前に徴兵されたナムボク。次第に打ち解けた二人は、互いに親しみを感じるようになっていった…。
●アジコのおすすめポイント:
ベテランのソル・ギョングが相手役に若手実力派のヨ・ジングを指命し、初共演が話題になった作品です。南北の兵士が戦争中に出会い、秘密文書を巡って繰り広げる戦車での珍道中。全体的にコミカルな展開で、のどかな村の人たちとのやりとりなど、チャン・ジン脚本による名作『トンマッコルへようこそ』を彷佛とさせる戦争ファンタジーにもなっています。監督は痛快な『パイレーツ』の脚本を担当したチョン・ソンイル。これが初監督作品。大きなハーシーズのチョコレートが出てきたり、蜂に刺されて顔が腫れ上がり、味噌を塗ったり。魚採りの帰り道がホタルでいっぱいになるシーンは素敵です。こんな二人だからこそ、どちらも無事にそれぞれの故郷へと戻って欲しくなる。二人は無事に戻れるのか?秘密文書の中味は何なのか?涙なくしては観られないラストに、真摯なメッセージが込められています。
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