あゝ、荒野 前篇(-----)
story
2021年、新宿。少年院から3年ぶりに出所した21歳の沢村新次(菅田将暉)は、歌舞伎町のラーメン屋に入る。羽振りのよさそうな隣の男の前に「全部入り」ラーメンが置かれた。その時、爆発音が聞こえ、男は見物に飛び出す。新次は残されたラーメンをむさぼり食って店を出た。
かつて、老人相手のに振り込め詐欺に手を染め、仲間の裕二(山田裕貴)のだまし討ちに遭って少年院に入った新次だったが、古巣に彼の居場所はなかった。手切れ金をはねつけ、復讐するため裕二のところへ殴り込むが、プロボクサーとしてデビューしたばかりの裕二から強烈なパンチを食らってしまう。倒れかけた新次を助けたのは、たまたま居合わせた二木健二(ヤン・イクチュン)だった。
一部始終を目撃していた元ボクサーの堀口(ユースケ・サンタマリア)は、人集めに配っていたビラを渡して、自分が運営するボクシングジムへ二人を誘う。
床屋で働く健二は、吃音があるため人間関係を築けずにいた。韓国人の母親は幼い頃に亡くなり、健二は元自衛官の父親・健夫(モロ師岡)に無理やり日本へ連れて来られたのだった。今は健二の稼ぎで暮らしているが、引退後の健夫は酒浸りとなり、健二に暴力をふるっていた。心の内にずっと溜め込んできた何かが弾け、健二はついに家を飛び出す。
金も居場所もなくなった新次は、海洋拳闘クラブを訪ね、クラブの前で健二と再会する。堀口は二人を歓迎した。クラブには住み込みできる上に、仕事もあった。その日から、二人はプロボクサーを目指してトレーニングを重ねていく…。
アジコのおすすめポイント:
あの寺山修司が唯一残した長編小説「あゝ、荒野」を、東京オリンピック後の近未来に置き換え、大胆に翻案映画化した作品です。二人の孤独な青年が新宿は歌舞伎町という荒野で出会い、ボクシングを通して互いに切磋琢磨。新たな自分自身を獲得し、アイデンティティーを見出していこうとする物語。監督はドキュメンタリー作家としてテレビ界で腕を磨き、16年に『二重生活』で監督デビューを飾った岸 善幸。主演はドラマに映画にとまさに大活躍中のカメレオン俳優、菅田将暉が無鉄砲な弟分役を演じ、内なる力を秘める兄貴分役を、なんと韓国のヤン・イクチュンが演じています。日本映画界との縁が深いイクチュンですが、『息もできない』は相当なインパクトを与えているのですね。本作のために身体を絞り、「ミスター演技設計」と現場で言われるほどに綿密な役作りを行っており、これまでにないヤン・イクチュンを見ることができます。前篇は二人がプロデビューするまでの道程。魂の叫びが炸裂する後編は、21日から公開です。
|