山 <モンテ>(Monte/Mountain)
story
中世後期のイタリア。南アルプス山麓にある小さな村の外れに集落があった。周囲を壁のようにそびえる山々に囲まれていたため、太陽の光を遮られて作物も思うように育たず、彼らの暮らしは困窮を極めていた。
夜になると霊魂が蠢く忌わしい土地として、居住禁止令も出ることになり、周りの家族は去って行ったが、娘のサラを亡くしたばかりのアゴスティーノ(アンドレア・サルトレッティ)と妻のニーナ(クラウディア・ポテンツァ)、息子のジョヴァンニ(ザッカーリア・ザンゲッツリーニ)は、先祖代々の土地と墓を守るため、この地に残っていた。
アゴスティーノは生活のため、ジョヴァンニに妻のそばを離れないよう頼むと、痩せた作物と手作りの人形や食器を台車に乗せて村へ売りに出かけて行った。しかし、山陰に暮らす人々は下層民や異端者として忌み嫌われており、邪眼と目を合わせないようにと誰も寄り付かない。心配してくれるのは村で暮らすニーナの妹アンナだけだった。
「恩恵をもたらすのは太陽のみ」と女(アンナ・ボナイウート)からお守りをもらったアゴスティーノは、運搬の仕事にありつくがパンと水しかもらえず、妻のヘアピンを売りに行くと盗んだと憲兵に追われてしまい、もはや祈りや神も信じられなくなる。禁止令のため、家にいたニーナとジョヴァンニも連行されてしまった。
すべてに絶望したアゴスティーノの怒りは、忌まわしき山へと向かう…。
アジコのおすすめポイント:
2016年の東京フィルメックスで初上映された名匠アミール・ナデリ監督の凄まじい作品が、ついに公開されました。念願のオール・イタリアロケで撮影された作品。その映像は影響を受けたイタリア・ネオレアリズモや敬愛する黒澤明監督作品を踏襲し、まるで中世の宗教画のような世界観を作り上げています。そして、そのテーマはというとずばり「限界への挑戦」と「突破」。真面目に生きてきた善良な男が、自然や人間、神にさえ絶望し、まさに「涓滴岩を穿つ」を体現していきます。主演はハリウッド映画でも活躍するアンドレア・サルトレッティ。『CUT』(11年)の西島秀俊同様に肉体を酷使するハードな役柄に挑戦しています。「日本では爆発させるのに適当な山がなくて」と話していた監督。老いてもなお、自伝的作品『駆ける少年』(85年)のように、やんちゃでエネルギッシュな情熱と映画愛を持つアミール・ナデリ監督の、孤高の傑作をぜひスクリーンでご覧ください。
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