あなたの名前を呼べたなら(Sir)
story
インド。高原の実家に里帰りしていたラトナ(ティロタマ・ショーム)は、突然雇い主から呼び戻される。雇い主は建設会社の御曹司アシュヴィン(ヴィヴェーク・ゴーンパル)。ラトナは大都会ムンバイにある高層マンションで住み込みメイドとして働いており、御曹司の新婚家庭で働く予定になっていた。ところが、婚約者サビナ(ラシ・マル)の浮気が発覚し、破談になってしまったのだ。
ラトナと運転手のラジュー(アーカーシュ・シンハー)が慌てて部屋へ戻ると、憔悴しきったアシュヴィンがアメリカから帰宅してくる。アシュヴィンはアメリカでライターとして働いていたのだが、兄の死で父の建設会社を継ぐことになり帰国していた。夢半ばで筆を折った彼にとって、破断は新たな挫折だった。家族が次々と彼を慰めに訪れるが、アシュヴィンの気持ちは晴れなかった。
ラトナな途方にくれる彼を慰めようと、自分の身の上を話してきかせた。口減らしのため、19歳で嫁がされたこと。ところが夫が病死して新婚4ヶ月で未亡人になったこと。彼女の郷里では未亡人になると人生は終わったも同然だった。それでも、ムンバイで働くことで、妹の学費を稼ぐことができる。そして、ラトナ自身にも夢があった。接点のなかった二人の気持ちがほんの少し近づく。
仕事の合間に近所の仕立屋を手伝っていたラトナは、メイド仲間のラクシュミ(ギータンジャリ・クルカルニー)の計らいで裁縫教室に通うことになる。楽しそうにドレスを仕立てるラトナに、アシュヴィンが「夢は仕立屋?」と尋ねると「ファッションデザイナーです」とラトナは宣言した。アシュヴィンはラトナとの生活に安らぎを感じ、彼女の夢を応援していくのだが…。
アジコのおすすめポイント:
フランス映画のような味わいのインド映画が登場しました。使用人と雇い主の恋、というとよくありそうですが、ここは階級差別の厳しいインド社会。アメリカで学び働いていた自由な気質の雇い主に対し、女性は因習まみれの田舎で育った未亡人。ただ、そんな彼女に「ファッションデザイナーになりたい」という自立心と才能があったことから、二人の距離が縮まっていきます。監督は主人公と同じくアメリカで学び映画界に入ったロヘナ・ゲラ。自分自身が疑問に思っていたことをテーマに描き、長編デビュー作品でありながら世界の映画祭で高く評価されました。ちなみに、インドでは「あり得ない物語」ということで公開されていないそうです。うーむ。主演は演技派のティロタマ・ショーム(来月公開予定の『ヒンディー・ミディアム』では対照的な役柄に!)と『裁き』のヴィヴェーク・ゴーンパル。この恋の行方はどうなっていくのか?じっくりとご覧ください。
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