はちどり(House of Hammingbird)
story
1994年、高度成長期のソウル。中学2年生のキム・ウニ(パク・ジフ)は高層団地に住んでいる。餅屋を営む父(チョン・インギ)と母(イ・スンヨン)は店で忙しく、高校生の姉スヒ(パク・スヨン)は塾をさぼってボーイフレンドと遊び歩いている。兄のデフン(ソン・サンギョン)は教育熱心な父の期待を背負ってソウル大を目指しているが、プレッシャーからウニに暴力をふるうこともあった。
ウニは学校になじめず、勉強よりも漫画を描くのが好きだ。家業が忙しいと一家総出で餅を作ることがあり、居眠りもする。だが、放課後には他校の男子生徒キム・ジワン(チョン・ユンソ)が迎えにきてくれる。二人は幼い恋を楽しんでいた。通っている漢文塾には、親友のジスク(パク・スニョン)もいた。クラブで出会った後輩のペ・ユリ(ソル・ヘイン)はウニに憧れていた。
父は高圧的な人だが、仕事が終わるとスーツに着替えて出かけていく。母は夫が浮気していることに気づいていた。そのことで喧嘩になり、おとなしい母が父にランタンを投げつけたことがある。父は怪我をした。だが、翌日になると何事もなかったかのように、父と母はテレビを見て笑っていた。
ある日、漢文塾の階段で、ウニはタバコを燻らせながら窓の外を見つめている女性を見かける。新しい塾の講師ヨンジ(キム・セビョク)だ。ソウル大学を休学中のヨンジは不思議な雰囲気を漂わせていた。彼女は授業で「相識満天下、知心能幾人」という禅語を紹介。「たくさんの顔見知りの中で、心がわかるのはどれくらい?」と問いかける。
ウニは次第にヨンジに心を開いていく。ジワンとうまくいかなくなった時、万引きがもとでジスクと喧嘩した時、ヨンジはウーロン茶を煎れてウニの話を聞いてくれた。
アジコのおすすめポイント:
高度成長期のソウルを舞台に、中学2年生という大人でも子どもでもない中途半端な世代の少女の心の軌跡を、日常生活とその年に起こった出来事を絡めて描いた瑞々しいヒューマンドラマです。自分たちが果たせなかった夢を託すべく、教育に力を入れる父親。父の言いなりでありながら、突然反旗を翻した母親の意地。受験に失敗して他の学区の高校に通う姉。父の期待に応えようと無理をする兄。一見、バラバラの家族ですが、家業の餅を家族全員で作る時は楽しそう。主人公が傷痕が残るかもしれない手術をすることになると、父は娘を不憫に思って泣いてしまいます。根強い家父長制度、学歴社会、男女差別の中で、大人に憧れながらも、大人って不思議?と思う少女の心の揺れが見事に描かれます。監督はこれが長編デビュー作のキム・ボラ。自身の体験をもとに、見事な脚本を仕上げました。主人公を演じるのはパク・ジフ。個性的な先生役をキム・セビョクが演じます。ドラマでは慈愛に満ちた父親役が多いチョン・インギの厳格な父も印象的。また『わたしたち』の頃から成長したソル・ヘインちゃんも登場します。クライマックスは実際に起こったソンス大橋の崩落で、兄姉妹3人の心が1つになるシーンは感動的。世界の映画祭で45冠以上を獲得しているのも納得。何度でも味わいたくなる作品です。食いしん坊のアジコは、お母さんが作るカリカリのチヂミが食べたくなりました。
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