ファイター、北からの挑戦者(Fighter)
story
ソウル。北朝鮮から脱北してきたリ・ジナ(イム・ソンミ)は、定着支援研修を終えて小さなアパートをあてがわれる。家賃は格安で国からの支援もあるが、新生活を始めるには稼がなくてはならない。なにより、北に残してきた父親を早く呼び寄せたい。
ジナはブローカーのビョリ(イ・ムンビン)の口利きで食堂の下働きを始めるが、賃金は安かった。もっと仕事をしたいと頼み込み、早朝からボクシングジムの掃除兼雑用の仕事も始める。館長(オ・グァンノク)は無口だが、若いトレーナーのテス(ペク・ソビン)はジナに親切だった。
ジムには女性ボクサーの練習コースがあり、ジナは興味を示す。テスが練習に誘ってくれたが、ジナは断った。だがある夜、親切そうだった不動産業者が酔ってがジナの部屋の前で待ち伏せしており、無理矢理襲ってきたため、突き飛ばして怪我をさせてしまう。たいした怪我ではなかったが、彼は悪質な慰謝料を請求してきた。
困ったジナはビョリに「あの人の家を教えて」と頼む。それは、先に脱北したまま10年以上も消息がわからなくなった母親(イ・スンミョン)だった。立派な家の前で、ジナは母親が再婚して娘までいることを知る。困惑する母に、ジナは「顔を見に来ただけ」と去っていった。
夜中、ジナはジムのサンドバッグに様々な思いをぶつけていた。北朝鮮時代、彼女は軍隊でボクシングをやっていたのだ。その様子を見た館長は、彼女の瞬発力に才能を見出し「アマチュア選手権に出てみないか?プロになればスポンサーが付き賞金も稼げる」と告げる。ジナは決意する。
アジコのおすすめポイント:
北朝鮮から脱北後、新生活を始めた若い女性が差別や困難の中、生きる道を見出していくヒューマンドラマです。女性ボクサーの物語ではあるけれど、勝負がメインのスポーツ根性ものではなく、偏見や差別に満ちた社会と闘い、不条理な状況と闘い、くじけそうになる自分と闘って逞しく生きて行く姿を描いています。そんな中で、自分を捨てた母親との確執も溶けていきます。監督はフランスで映画を学んだユン・ジェホ監督。2012年にカンヌ映画祭の研修プログラムで家族について書いた3部作の2作目で、短編映画や長編ドキュメンタリー映画(『マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白』など)を撮ってきた中で出会った人や聞いた話をもとに脚本を書いたそうです。主人公を演じたイム・ソンミは本作が初の主演作。1ヶ月半をボクシングのトレーニングと方言レッスンに費やし、見事、監督の期待に応えました。完成後の試写会では、まだ役から抜けきらず、映画を見て泣いてしまったそう。渾身の演技をぜひ、スクリーンでご覧ください。
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