レイジング・ファイア(怒火/Raging Fire)
story
チョン警部(ドニー・イェン)は臨月の妻ホーイン(チン・ラン)と幸せな日々を送っていた。夜には長い間追ってきた凶悪犯ウォン(ブライアン・リー)の麻薬取引現場へ踏み込む大捕物がある。気を引き締めるチョン。だが、彼のチームは外された。出動前に上司に呼び出され、有力者の示談案件の調書改ざんを頼まれるが、正義感が強くどんな悪も許さないチョンは断ったのだ。
現場へは親友のイウ警部(レイ・ロイ)たちが向かっていた。ところが、仮面をつけた謎の5人組が乱入し、取引相手のベトナムマフィアを殺して麻薬を強奪。彼らはウォンも張り込んでいた警察部隊も殲滅させる。チョンたちが現場へ到着した時、イウ警部はすでに息絶えていた。
仮面グループのリーダー、ンゴウ(ニコラス・ツェー)は強奪した麻薬をマンクワイ(ペン・ラム)に渡し、金を4人の仲間たちに分配。しばらくおとなしくするよう命じる。一方、チョンは麻薬がマンクワイに渡ったことを突き止め、彼を捕まえようとするが、追跡劇の果てにマンクワイは車に轢き殺される。運転していたのはンゴウだった。
チョンは自殺した部下の命日に、墓参りに出かける。そこにはンゴウたちも来ていた。「出所したのか。恋人は元気か?」軽く会話を交わすチョンとンゴウ。だが、彼らには大きなわだかまりがあった。かつては有望なエリート刑事だったンゴウとチョンとは、先輩と後輩の仲だった。だが、4年前の誘拐事件で彼らの運命は狂わされる。
大手銀行のフォック会長(サミュエル・クォック)が誘拐され、副総監(ベン・ユエン)の指揮でチョンとンゴウが捜査を担当。ンゴウは早々に容疑者を確保し、居場所を聞き出すために部下たちと暴行を加えていた。どんな手を使ってもいいと副総監から命じられたのだ。だが、反撃に出た容疑者をンゴウが殺してしまい、その現場を目撃したチョンの証言でンゴウと部下たちは刑務所へ。自殺したのは、その時のンゴウの部下の一人だった。
フォック会長や上司の裏切り、尊敬していたチョンの証言で、輝かしい未来や家族、恋人も失ったンゴウと部下たちは壮大な復讐を胸に誓っていた…。
アジコのおすすめポイント:
先輩と後輩の仲だった警察官同士が、ある事件をきっかけに敵対。壮絶な闘いを繰り広げるポリスアクション・ヒューマンドラマです。警察上層部に蔓延する有力者への忖度や隠蔽工作の犠牲になった男たちと、彼らの転落のきっかけとなってしまった主人公の苦悩と闘いをじっくりと描きます。アクションだけでなく、取り調べ室での頭脳戦も見所。復讐の鬼と化した男たちの目的とは…。久々に本格的警察アクションを手掛けたのはアクション映画の巨匠ベニー・チャン。アクションの中に人間ドラマをじっくりと盛り込み、情感溢れるアクションドラマを描くのが特徴ですが、本作ではそれがさらにスケールアップ。まさに集大成にふさわしい作品に仕上がっています。主演は初期のTVシリーズ以来のタッグとなったドニー・イェンと、『ジェネックス・コップ』『インビジブル・ターゲット』など、ベニー・チャン作品に深く関わり、アクション俳優としても育ってきたニコラス・ツェー。狂気に近い怒りに満ちた演技を見せてくれます。懐かしい俳優たちの出演も嬉しいポイント。残念ながら、ベニー・チャン監督は本作の撮影中に癌が発覚。作品を完成させた後、公開(コロナのせいで2021年夏公開)を待たずに帰らぬ人となりました。享年58歳。残念です。ベニー・チャンの遺作となった熱気溢れる本作を、ぜひ劇場でご堪能ください。
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