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asicro interview 27

更新日:2008.9.22

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『インビジブル・ターゲット』が公開中のベニー・チャン監督
監督が語る撮影裏話と
3人の主演俳優たち
−ベニー・チャン(陳木勝)

 ニコラス・ツェー、ショーン・ユー、ジェイシー・チェンと、香港を代表する若手俳優によるアンサンブルが存分に楽しめる新世代ポリス・アクション『インビジブル・ターゲット』。

 公開をさかのぼること2ヶ月前の7月に、監督のベニー・チャンが来日。合同インタビューで、作品や主演3人について、また監督の製作ポリシーや今後の方向性などについても語ってくれましたので、ご紹介します。


●『インビジブル・ターゲット』について

80年代の香港映画の匂いがしますが、昔の香港映画を意識されているのでしょうか?

 監督「僕自身、80〜90年代の香港映画を観て育ったので、その時代の香港映画の印象は深いのですが、特に意識したわけではありません。実は『プロジェクトBB』を撮った後、スポンサーからジャッキー・チェンの出ている映画にしてはアクションが少な過ぎるという意見がかなりありました。そこで、『インビジブル・ターゲット』はアクション満載にしたのです。それがたまたま、80年代の香港映画のテイストにマッチしたのでしょう」

撮影期間はどのくらい? また一番、テイクの多かったシーン、難しかったシーンは?

 監督「製作期間全体は1年ですが、撮影だけだと3ヶ月半です。一番テイクが多かったのは、深夜にショーンとウー・ジンが初めて遭遇するシーン。ウー・ジンがショーンの胸を蹴るのですが、なかなかきれいに決まらなくて、ショーンは15、6回くらい蹴られました(笑)。テイク数というよりも、ニコラスのシーンは2テイクでしたが、もっと危険で恐かったです。彼は必死になってやりますし、危険なアクションが多かったので、むしろそっちの方が心配でした。自分の身体のことを考えずにやろうとするので」

怪我はありましたか?

 監督「足を怪我しました。撮影初日で、ウー・ジンとニコラスが屋根から飛び降りてチェイスをするシーンです。もちろんワイヤーで吊っているのですが、膝と膝が思いきりぶつかりあってしまったんです。ひどく傷めたんですが、撮影初日で、しかも主人公と悪役のボスなのでやめるわけにもいかず、多分、彼らは撮影期間中ずっと痛みを我慢して撮影していたと思います」

主役の3人がスタントなしで頑張った見どころシーンは?

 監督「ニコラスは2つあります。1つはバスのシーンで、空中で跳ねられるところ。もう1つはラストのウー・ジンとの闘いです。かなり我慢して闘っていました。どちらを選ぶかとすれば、ラストです。ショーンは、ウー・ジンと初めて遭遇して深夜に闘うシーンが、彼のアクションの中では一番よかった。ジェイシーだけはあまりアクションシーンはないのですが、3階から燃えている中を飛び下りるシーン。あれが一番よかったです。この作品では、スタントは全員使っていません」

●主演の3人について

キャスティングを決めた経緯は?

 監督「この3人は、香港の新しい世代のニュースターです。撮影する前、3人に『闘えるか? 殴られても我慢できるか?』と尋ねると、3人とも『できる』と答えたので決めました」

脚本段階で、この3人を想定しておられたのですか?

 監督「他にも候補はいましたが、この3人に決まってから、彼らに合わせて脚本を若干修正しました」

監督からみた3人の持ち味は?

 監督「ニコラスはいわゆる武術マニアです。家でもずっと練習をしていて、部屋の中で棒を振り回してトレーニングしています。彼には将来、カンフーアクションも含めたアクションのビッグスターになる可能性があるでしょう。ショーンは逆に、闘ったり殴ったりするのがあまり好きではありません。2枚目ですし、普通のドラマの方が得意だと思います。ジェイシーは多才でいろんなことができます。デビューしたばかりの新人なので、今はまだ、とてもいい子なイメージなんですが、この先、いろんな監督が彼を開発していくでしょう。僕は彼ら3人のそんな特徴をつかんだ上で、この映画を撮りました」

ジェイシーは今までにないタイプの俳優だと思うのですが、どんな風に育って欲しいですか?

 監督「僕としては、ジェイシーは父親のようなアクション系ではなく、ドラマの方で伸びていって欲しいと思います。この『インビジブル・ターゲット』を観てもわかるように、彼自身、演技力が伸びています。歌も歌うし演技もするけど、闘ったり喧嘩したりするのは好きでない。父親は武人ですが、彼はどちらかというと文人という感じなので、できれば演技派としてドラマの方で成長して欲しいです」

香港俳優として、この若い3人は韓流を超えられるでしょうか?

 監督「今市場には中国映画や香港映画も出ていますし、韓国映画は2、3年前に比べるとパワーダウンしているように思えます。逆に、日本映画や香港映画の方に勢いがあります。3人共まだ若いので、アジアという枠を超えることはできるでしょう。ただ、そのまま大人気スターになるかどうかは、彼ら次第です」

ジェイシーやニコラスは父親を超えるよい俳優になるでしょうか?

 監督「時代が違います。彼らの父親の時代は、何もないところから自分の身体1つで作り上げて行く世代でしたが、今はそういう必要がありません。出発点が違うのです。親を超えられるかどうかは彼ら次第ですが、ジェイシーの場合は、父親とはまったく違う路線を歩もうとしています。デビューは歌からでしたし、歌ったりギターを弾いたりもします。一方で、ドラマや演技派の方にも進もうとしているので、父親と比較したり、父親を超えたかどうかを証明するは必要ないでしょう」(続きを読む)


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Profile
ベニー・チャン
陳木勝/Benny Cheng

1969年10月7日、香港生まれ。81年よりTVBでジョニー・トー監督のアシスタント他、多数のドラマを監督・プロデュースする。90年に『アンディ・ラウの逃避行』で監督デビュー。めきめき頭角を表し、98年にはジャッキー・チェンに指名されて『Who Am I?』を共同監督。その後も、ジャッキー製作の映画を多数監督。ヒットメーカーとして活躍中。
filmography
アンディ・ラウの逃避行 (90)
・帯子洪郎(90)
風よさらば/天若有情2(92)
・嘩!英雄(92)
マジック・クレーン(93)
・歡樂時光(95)
・旺角的天空〔95)
・衝鋒隊怒火街頭(96)
フー・アム・アイ?(98)
ジェネックス・コップ(99)
ジェネックス・コップ2 (00)
ヒロイック・デュオ
 /英雄捜査線
(03)
人肉晩餐会(04)
香港国際警察(04)
ディバージェンス
 /運命の交差点
(05)
プロジェクトBB(06)
インビジブル・ターゲット
 (07)
・保持通話/Connected(08)
最新作情報
もうすぐ香港で公開となる『保持通話/Connected』は、ハリウッド映画『セルラー』の香港版リメイク。出演はルイス・クー、バービー・スー、リウ・イエ、ニック・チョンとなっています。