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安魂

監督:日向寺太郎
原作:周大新「安魂」(谷川毅訳・河出書房新社刊)
脚本:冨川元文
総合企画:田原
撮影:押切隆世
照明:尾下栄治
編集:川島章正
芸術統括:明振江
美術:姫建剛
音楽:Castle in the Air(谷川公子+渡辺香津美)
出演:ウェイ・ツー、チアン・ユー、ルアン・レイイン、北原里英、チェン・ジン、チャン・リー

2021年/中・日
日本公開日:2022年1月15日
カラー/ビスタサイズ/5.1ch/108分
字幕:コンテンツセブン
配給:パル企画
© 2021「安魂」製作委員会
 

poster


安魂(安魂/---)

story

 大河が流れている。畑で遊ぶ少年が老人に呼び止められる。少年の父は表彰されたばかりの作家、唐大道(タン・ダーダオ/ウェイ・ツー)だ。占い師の鉄頭じいさんは、10歳の少年・英健(イン・ジェン/ファン・ドンハイ)の不吉な未来を予見する。

 20年後の開封(カイファン)市。29歳になった英健(チアン・ユー)はオフィスで仕事に忙殺されていた。今日は3年越しの恋人・張爽(チャン・シュアン/ルアン・レイイン)を両親に紹介する日だ。著名作家となった父の唐大道は新刊本のサイン会を開いていた。

 田舎からバスでやって来た張爽を自宅に連れていき、ご馳走を用意していた母(チェン・ジン)と父に紹介する英健。だが、独善的な父は張爽を気に入らず、釣り合わないと背を向けた。傷ついた張爽をバスターミナルまで送った英健は「父を説得して迎えに行く」と誓い、彼女を見送る。

 その後、過労と心労でフラフラの英健は、ターミナルのベンチで置引を目撃。荷物を取り戻すが、そのまま倒れてしまう。それは日本人留学生、星崎沙紀(北原里英)の荷物で、彼女の通報で英健は病院へ運ばれた。両親が駆けつけ、張爽も戻ってきた。診断は脳腫瘍。その後、入院して手術を受けるが、英健は亡くなってしまう。

 一人息子の死は、唐大道に大きな喪失感をもたらした。最後に会った時に「父さんが好きなのは僕ではなく、心の中の僕なんだ」と言われたことが心に刺さっていた。雨の中の葬儀。泣き暮らす両親。諦めきれない唐大道は、息子の魂の居場所を探すため、世界中の宗教書を読み漁る。息子の魂は、7日間は近くにいるはずだ。

 そんなある日、唐大道は息子にそっくりな青年がキックボードで通りすがるのを見かける。彼の跡を追ってたどり着いたのは、心霊治療院だった。彼の名は劉力宏(リウ・リーホン/チアン・ユー)。叔父の劉万山(リウ・ワンシャン/チャン・リー)と共に、怪しげな降霊術を行っている。

 一方、張爽は事情を知った沙紀の好意で、彼女の下宿先に滞在していた。街で沙紀も力宏を見かけ、張爽に会うよう勧めるが、彼女は会いたがらない。だが、唐大道は英健にそっくりな力宏に会いたくて、降霊術に通いだす…。

アジコのおすすめポイント:

中国の古都、河南省の開封(カイファン)市を舞台に、最愛の一人息子を若くして亡くした小説家の父親が、悲しみの中で理性を失いながらも、ある奇跡によって心の平安と家族を取り戻すヒューマンドラマです。原作は、謝飛(シェ・フェイ)監督の『香魂女 ー湖に生きる』(1993年)の原作者として有名な周大新(チョウ・ターシン)の同名小説。一人っ子政策の時代に生まれた一人息子を亡くした自身の体験を、息子との魂の交流として綴った作品です。今回は日中国交正常化50周年作品として、『火垂るの墓』(08年)や『こどもしょくどう』(19年)で知られる日向寺太郎監督がメガホンをとり、『うなぎ』(1997年)『出口のない海』(16年)のベテラ脚本家・冨川元文が原作を大胆にアレンジ。息子と瓜二つでありながら、性格は真逆な青年との交流を通じて、それぞれの人生に光が差す過程を感動的に描いています。父親を演じるのはベテラン俳優のウェイ・ツー。妻役を『唐山大地震』のチェン・ジン、そして息子と青年役を若手俳優のチアン・ユーが二役で演じ分けます。日本人留学生役で元AKB48の北原里英も出演。たどたどしいけど、頑張って中国語の台詞に挑戦しています。父親がおりに触れて見つめる、濁流渦巻く大河は黄河でしょうか。たまたま同時期に公開中の中国映画『こんにちは、私のお母さん』とは設定が対照的ですが、どちらも親と子の深い愛と絆を描いた作品として感動を味わえる作品です。

*悲報:上映されている岩波ホールが7月に閉館とのこと。芸術性の高い作品を上映するミニシアターの先駆けとして一時代を築いた老舗シアターの閉館は、非常に残念です。ぜひ、この機会に劇場へお運びください。


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