再会の奈良(又見奈良/Tracing Her Shadow)
story
2005年11月。定年退職した元警察官の吉澤一雄(國村隼)は、居酒屋で酒を飲んでいた。その店でアルバイトをしていたシャオザー(イン・ズー)の父は中国残留孤児だ。帰国事業で日本に帰ったが中国へ戻り、シャオザーは清水初美として日本に留まった。そのシャオザーに父から連絡が入る。中国で祖母のように慕っていた陳慧明(ウー・イエンシュー)が日本にやって来るという。
おばあちゃんは中国残留孤児の麗華(リーホア)を養女にして、赤ん坊の頃から育ててきた。1972年に日中国交正常化が実現し、麗華が大人になった1994年、実の両親がいる日本に帰した。しかし、数年前から連絡が取れず、心配で探しに来るという。
シャオザーは空港でおばあちゃんを迎え、アパートへ連れていく。シャオザーは柿工場で働いており、同僚の健二(秋山真太郎)と結婚を前提に同棲していたのだが、健二の両親に反対されて別れたばかりだった。おばあちゃんが留守番していると、健二がやってきて自分の荷物を持って出て行った。好青年なのに…。
麗華探しが始まり、シャオザーは仕事を休んでおばあちゃんに付きそう。手がかりは写真と十数通の手紙だけ。日本名もわからない。途方に暮れていると、たまたま通り掛かった一雄に声をかけられた。元警官のツテを使って協力してくれるという。
奈良の中国残留帰国者協会の会長、麗華が以前勤めていた豆腐屋、寺の管理人(永瀬正敏)と、麗華の消息をたどるうちに、予想もしなかった事実が判明する…。
アジコのおすすめポイント:
中国残留孤児と養母との深い愛情をベースに、日本へ帰国した養女探しをしながら、美しい奈良の風景や風物詩と共に様々な人々との出会いを描いた日中合作のヒューマンドラマです。監督はパリで映画を学び、台湾のツァイ・ミンリャンや韓国のホン・サンスのもとで修業を積んだポンフェイ。奈良と世界を繋ぐ映画製作プロジェクト「NARAtive」の2019年度作品として、河瀬直美監督とジャ・ジャンクー監督の共同プロデュースで製作されました。リャオ・ベンロンによる映像も美しく、古都奈良の様々な自然が映し出されます。主演は世界で活躍する國村隼と『妻の愛、娘の時』のウー・イエンシュー。肉屋さんでのやりとりや、お寺の鐘などユーモラスなエピソードも多く、楽しめます。果たして、養女は見つかるのか? 過酷な現実の中に人々の温かさも描かれ、味わい深い作品になっています。
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