ワン・セカンド 永遠の24フレーム
（1秒鐘/One Secong）
story
1969年。文化大革命の時代。広大な砂漠地帯を一心不乱に歩き続ける男（チャン・イー）がいた。向かった先は小さな村の映画館。だが、すでに上映は終わっており、フィルムの入った缶はバイクで次の村へ運ばれようとしていた。ところが、バイクの荷台にあったフィルムの1缶を子供が盗み出してしまう。
たまたま、その様子を目撃した男は子どもを追って捕まえる。ボロボロの服を着た浮浪児の少年と思ったその子は、次の目的地に住む孤児の少女リウ（リウ・ハオツン）だった。男にとっても、少女にとっても、そのフィルムは重要だった。映画本編の前に流れるニュース映画22号、そこには労働改造所に送られている男の離れて暮らす娘の姿が映っているらしい。それを見るために、男は脱走してきたのだ。
一方、リウは外へ出られない弟（チャン・シャオボー）のために、フィルムで作ったランプシェードが必要だった。それぞれの事情を知らないまま、二人は故障したバイクの代わりにフィルムを運ぶトラックに拾われ、次の上映がある村へ到着する。待っていたのは映画を心待ちにしている村人たちと、「ファン電影」と呼ばれて親しまれている映画技師のファン（ファン・ウェイ）だった。
ところが、重大な問題が持ち上がる。トラックを運転していた運転手ヤン（ツァオ・ルイ）の不手際で、積荷が落ちてフィルムが砂まみれになっていたのだ。ヤンはファンの息子だった。映画の上映がなくなってがっかりする村人を前に、ファンはフィルムを洗浄する決心をする。それは大変な作業だが、女たちは蒸留水を作り、皆が手伝った。
カメラマンだった男も協力し、ファンとの間に信頼関係が生まれてくる。合間にリウの家を尋ねた男は、リウの境遇にも同情していた。そして、いよいよ…。
アジコのおすすめポイント：
巨匠チャン・イーモウ監督の映画愛溢れるヒューマンドラマです。原作は『妻への家路』と同じゲリン・ヤンの小説。物語の結末部分が描かれた前作と違い、別のエピソードから物語が発展していったようです。ニュース映像の中でたった1秒間だけ映る娘の姿見たさに、砂漠を越えて脱走してきた男の愛。貧しい孤児の少女の弟への愛。失敗ばかりする息子をかばいたい映画技師の愛。映画が観たくてフィルムの洗浄に協力する村人たちの愛。それらがすべて相まって、上映される映画へと集約されていきます。そして、そこから生まれた絆が未来へと繋がっていきます。シンプルながら心温まる感動作は、『初恋の来た道』の頃のチャン・イーモウ作品を彷彿とさせ、まさに原点回帰。いや、その先の新境地に到達したかのよう。描かれているエピソードの多くは監督が体験したものだそうで、本作はパーソナルな青春時代の記憶と語っています。主演は今や人気俳優のチャン・イー。オーディションで数千人の高校生の中から選ばれたリウ・ハオツンは演技経験がなく、2年以上演技の基礎を学んでから本作に挑んだそうです。新たなるイーモウ・ガールのリウ・ハオツンは、監督の次回作ですでに多数の受賞に輝いている『悬崖之上（Cliff Walkers）』や今年の春節映画として公開された『狙击手』にもチャン・イーと共に出演しています。
行定勲監督 特別インタビュー映像（限定公開中）
行定勲監督が本作や監督について熱く語るインタビューです。
|