story
停車した車の中で、眠っている父親(モハマド・ハッサン・マージュニ)のギプスに描かれた落書きのピアノを、悪戯好きな6歳の弟(ラヤン・サルラク)が弾いている。母親(パンテア・パナヒハ)は助手席で眠っていた。運転担当の兄ファリード(アミン・シミアル)は、外へ出て水を飲みながら目の前の山々を眺めていた。
スマホからアラーム音が鳴り両親が目覚める。目覚ましではない。置いてきたはずのスマホを弟がパンツの中に隠し持っていたのだ。怒った父親が取り上げ、母親はSIMMを取り出して捨てに行った。友達が心配すると駄々をこねる弟。だが、外に出て雄大な山々の景色を見て感動。「神様、この景色をありがとう」と地面にキスをする。いつものことだ。
家族4人と病気の犬ジェシーを乗せた車が、干上がったウルシア湖を越えた頃、尾けてくる車に気づいた父親が店の前で車を停めさせる。ガソリン漏れを知らせようとしていたらしい。幸い、エアコンの排水漏れだった。母親が歌い出し、弟が無邪気に踊る。「やめて。最後の最後に。気が滅入る」とファリード。彼だけが憂鬱な顔をしている。
ロードレース中のサイクリストが並んで横を通り抜けていく。車に挨拶した青年が転倒し、泣いていた。病院へ運ぼうと車に乗せて話をする。彼が賞賛するアームストロングは、ドーピングが発覚して自転車界から追放されていた。父親は青年に「曇りのない、正直な人生を歩め」と助言する。青年は自宅近くで車を降りた。
湖の近く。犬をトイレに行かせたファリードと弟は一緒に遊んでいる。父親はある男に電話をし、今後のことを確認していた。彼は家と車を売って金を作り、その男に成人した息子の将来を託していた。乾燥地帯から丘陵に入った車が、羊の群れと出会う。父親が羊皮を選んで羊飼いに金を渡すと、霧の中から覆面男がバイクで現れ指示を出した。
家族は国境近くの村へ向かう…。
アジコのおすすめポイント:
4人家族が車で旅をするロードムービーです。古い歌謡曲を流して歌い、休憩もはさみながら、埃っぽい未舗装の道路をひた走る一家。何も知らない腕白な弟は大はしゃぎ。でも、車を運転する兄の顔は憂鬱。なぜならそれは、最後の家族旅行だから。イランの複雑な社会背景を舞台に、国境地帯への危険な旅をする一家が描かれます。
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