ビー・ガン | ショートストーリー
(破碎太陽之心/A Short Story)
story
孤独な黒猫が草原を歩いていると、案山子と出会う。自由になりたい案山子は自分を燃やして欲しいと頼む。「この世で一番大切なものは?」と尋ねる黒猫に、案山子は3人の奇人を訪ねるようアドバイス。案山子が残した帽子と長靴、手袋とボロを纏い、黒猫(チェン・グーファ)は旅に出る。
最初に訪ねたのは養護施設。飴を作るのが得意なロボットがいるのだが、施設はすでに閉鎖され、ロボット(シー・リージョウ)は電池切れになっていた。黒猫はガラスを割って太陽の光をロボットにあてる。充電されたロボットは胸から飴を取り出して黒猫に渡した。
次に訪れたのは、記憶が短い女(タン・チョウ)だ。愛する人を失った痛みを忘れる為、記憶を失う麺を食べている。覚えているのは手紙をもらったことだけ。だが、内容は覚えておらず、手紙をくれた人しかわからない。黒猫は片目を取り出して、暗い部屋に灯りを灯す。女が部屋のドアを開けると、手紙を読む声が聞こえる。
最後に黒猫が訪れたのは、悪魔(チェン・ヨンゾン)だった。悪魔は手品師になって、本物の魔法を習得していた。彼に会うためには、大きな代償を払わなければならなかった。代わりに黒猫は、悪魔から宝物をもらう。
今日は黒猫を拾って飼っていた少女(ウー・コンコン)の誕生日だ。変装していた黒猫は、少女に最高の贈り物をしたかったのだが…。
アジコのおすすめポイント:
『凱里ブルース』『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』で世界から注目され、次の長編作品が期待されている中国の新鋭ビー・ガン監督の最新作です。それはなんと15分のショートストーリー。黒猫が「この世で一番大切なもの」を求めて3人の奇人と出会う旅に出るというストーリー。その目的は、かつて自分を飼ってくれた少女への贈り物。ほろ苦い結末と共に、常に光、太陽のエネルギーが生命や愛の源であることが表現されています。悪魔役で常連のチェン・ヨンゾンさんも出ています。
アート系の監督ならではのファンタジックな本作は、実は中国・上海を拠点にパリなどで商品展開をしている猫グッズのブランド、pidan(ピダン)の依頼で制作されたもの。完成した作品のクオリティの高さにフランスの製作会社が着目し、カンヌ映画祭で短編作品として世界公開を切望。劇場公開できる映画作品として世に出たのでした。単独での劇場公開は、今回の日本が世界初です。しかも業界初の試みで、ワンコイン(500円)興行となっています。なんという贅沢な500円。ぜひ、劇場にてこの奇想天外な美しい映像をご覧になってください。
尚、ビー・ガン監督の最新作『Resurrection』(レザレクション:復活の意味。来年から着手予定。『マトリックス』みたいですネ)は未来的イメージのSF映画になる予定とか。このショートストーリーにもすでに、そのようなイメージが現われています。最新作の完成も楽しみです。
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