パンデミックで人々が孤立し、不景気が蔓延している時期を背景に描かれる、シンプルで細やかでハートウォーミングなヒューマンドラマです。仕事もせず、だらしない生活を送っていた若い女性が、やむを得ず母親のキンパ店を手伝ううちに仕事の面白さに目覚め、新しい出会いにも恵まれ、生き方を修正していきます。散らかった部屋が、清々しい部屋へと変貌していく細かい描写も秀逸。主人公には忘れられない誰かの存在が時折登場。説明がない分、想像の余白があり、彼女が過去を乗り越えて新たな自分に向かっていく様が、美味しいそうなキンパと共に描かれていきます。監督はこれが長編デビュー作のクァク・ミンスン。主演は『人生は、美しい』で主人公の親友を演じ、本作が初主演作となるシム・ダルギ。大人の女性を演じたのは初めてとのこと。何かに囚われている主人公が徐々に解放され、希望を見出していく様を自然体で演じています。ところで、恵方巻の時期に公開となった本作。きっと、キンパが食べたくなりますよ。アジコも端っこが好きです。