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何も知らない夜

何も知らない夜(A Night of Kowing Nothing)

監督:パヤル・カパーリヤ-
脚本:パヤル・カパーリヤ-
撮影:ラナビル・ダス
編集:ラナビル・ダス
美術:チャン・ミウリン
音楽:ドリティマン・ダス(Topshe)
音響:モイナク・ボース、ロマン・オザンヌ
手紙の朗読:ブーミシュタ・ダス

2021年/仏・インド
日本公開日:2025年8月8日
パートカラー/1.33:1/ヒンディー語、ベンガル語/103分
字幕:藤井美佳
配給:セテラ・インターナショナル
©Petit Chaos - 2021
2021年 カンヌ国際映画祭 監督週間
 ゴールデンアイ賞(ベスト・ドキュメンタリー賞)
2021年 マル・デル・プラタ国際映画祭
 コンペティション部門 作品賞
2021年 トロント国際映画祭
 アンプリファイ・ボイス賞 スペシャルメンション
2021年 カムデン国際映画祭 映画的ビジョンの出現賞
2021年 リスボン映画祭 最優秀作品賞
2022年 台湾国際ドキュメンタリー映画祭 優秀賞
2022年 ドク・アライアンス・アワード
 最優秀ドキュメンタリー賞
2022年 ミラージュ映画祭 監督賞(パヤル・カパーリヤ-)
2023年 山形国際映画祭 コンペティション部門 大賞

poster

story

 FTII(インド映画テレビ研究所)のS18号室にある戸棚から、小箱が見つかった。中には切り抜きや押し花、メモリーカードと共に手紙が入っていた。差出人はL。それは、恋人に宛てた差し出されることのない手紙…恋人は結婚を反対され、親に軟禁されている。Lは不思議な夢を見る。

 日曜の朝、友人の映画の編集を手伝う。窓辺でまどろむ女。自由な昼下がり。大学では、学生デモへの締めつけが厳しくなってきている。2015年、モンスーンの頃。FTIIで起こった学生によるストライキ。きっかけは、新所長にチョウハン氏が任命されたから。彼はヒンドゥー至上主義組織の支持者だ。

 学生たちの抗議活動は広がっていくが、反国家運動とみなされ政府が介入。逮捕者が出た。ハンガーストライキも139日で打ち切りとなった。だが、学生デモはハイデラバード中央大学でも起きた。警官の侮辱的な脅しは、ダリト(不可触民=カースト外の最下層民)に向けられる。カースト外結婚をして新郎が父親に殺される事件もある…。

 2016年、ダリトの学生ローヒト・ヴェムラが自殺したのをきっかけに、学生たちの間で反ダリト差別、反カースト運動が大きく広がっていく。

アジコのおすすめポイント:

7月25日から絶賛公開中の『私たちが光と想うすべて』のパヤル・カパーリヤ-監督が、2017年から映画仲間たちと撮りためた映像に、他の大学で記録に残すため撮影された映像や古い家族のアーカイブ、ネット投稿動画などを組み合わせ、秘められたラブストーリーという形で2016年前後に起こった学生運動の状況を綴った初長編ドキュメンタリー作品です。『私たちが光と想うすべて』の公開を記念しての上映ですが、本作も様々な海外の映画祭から高い評価をうけており、続く長編映画で描かれている女性や恋人たちの不条理な状況への理解がより深まります。カーストが違う結婚で親が子どもを殺すなんて…そんな現実が今も続いているんですね。学生デモの背景にある大学での差別主義、政府がらみの弾圧。インドならではの社会問題を暗闇の中にあぶり出し、それでもなお、本作はインドの公立大学制度への讃歌だと語る監督。公立大学こそが、階級や宗教での差別をなくして皆に門戸を開き、真の自由をもたらす可能性があるのだと、ここで演出を学んだ監督が証明しているのです。

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▼公式サイト ▼予告編