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ASICRO FOCUS file no.21c

「甘い人生」記者会見

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とても丁寧に答えるイ・ビョンホン

●キム・ソヌを演じてみて、俳優人生にプラスとなったことはありますか?

 ビョンホン「人生で一番大きなターニングポイントはいつだったか?とか、この作品は自分の人生をどう変えたか?とよく聞かれるのですが、特に大事件があったという感じはないんです。この映画に対しても、自分の人生観がどう変わったかとか、自分の考えがどう変わったか、というのは、時間が経ってからわかることだと思います。後で思い返した時に、ああ、あの時自分はこういう風に揺れていたんだとか、この作品は自分にこんな変化をもたらしてくれたんだということは、時間が経って客観的になってから、少しずつわかってくるのではないかと思います。

 でも、重要なことは、この『甘い人生』という作品が、私の俳優人生の中で本当に大切な作品になったことです。この映画が、客観的に作品としてどう評価されるかとか、興行成績がどうかということはさておいて、私にとっては本当に大切な作品です。それは苦労したからではなく、ほんとうにいい作品に巡り合えたからです。舞台挨拶の時に何度も話しましたが、ほんとうにいいスタッフ、立派な共演者に恵まれていたと思います。こう言うと、なにか常套的な言葉と受け止められるかもしれませんが、ほんとうに私の素直な気持ちなんです。

 今回、大好きな監督と一緒に映画を撮ることができ、スタッフもひとりひとりが韓国の映画界で認められた立派な方ばかりでした。また、共演した俳優の方たちも、ご存じかもしれませんが、どの映画に出ても主役になれるような、エネルギーとカリスマ性を持った方ばかりで、役の大小はありましたが、ほんとうにそれぞれ共演者の方たちが一生懸命演じてくれまして、私はこの作品に対して大きな愛着を感じています。」

●アクション・シーンの多い作品でしたが、アクション・シーンについて、また撮影中のエピソードについて教えてください。

 キム「この作品は、単純なアクション映画とは違うと考えています。ジャンルとしては、ノワールに属すると位置づけています。もちろん、その中にはアクション・シーンも出てきますし、ギャング映画あるいはヤクザ映画に出てくるような部分も盛り込まれています。ただ、そのことでノワールと呼ぶのは、少し違うと思います。では、ノワールというのはどういうものなのか?という視線でお話したいと思います。

 ノワールというのは、いわゆるヤクザ映画に大変近いものはあるのですが、ただ、それを一層美学的に、あるいは哲学的にいろいろ検討したもの、そういう美学や哲学を含んだものを、自分としてはノワール映画と言えるのではないかと思っています。今回、作品の中でイ・ビョンホンさんをはじめ、たくさんの演技者の方たちが出演して、非常にリアルなアクション・シーンを繰り広げました。それは、ただ単にアクションを見せるためのアクション・シーンではなくて、非常に繊細な感情なども盛り込まれています。アクションに、繊細な感情をどういう風に盛り込むか、それが今回の作品作りの中で、私が最も研究した部分でもあります。

 映画を見ていると、最初からラストへとストーリーが展開していく中で、アクションの強度がだんだん強くなっていくのが感じられると思います。それはアクションだけが強烈になっていくのではなく、その中に流れる彼の感情がだんだんと強くなっていくのです。このアクションの強度の変化は、その時その時のソヌの感情の変化と同じなのです。だから、ソヌの気持ちがだんだんと強く荒々しくなっていくのと、アクション・シーンがより一層強烈で暴力的になっていくのとはイコールなっているのです。

 このように、アクションの隅々に至るまで、登場人物の気持ちを繊細にどのように含めることができるか、ということに関して大変悩み、いろいろ考えました。特にこれというエピソードはありませんが、すべてのシーンが毎回毎回、ほんとうに大変でした。」

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 ビョンホン「「エピソードはたくさんあるのですが、あまり知られていないエピソードをここで披露しましょう。映画の中で、私がエスプレッソを飲むシーンがあります。あそこは大クローズアップで、かなり寄って撮っているのですが、角砂糖を入れて手ですぐかき混ぜるシーンなので、手のひとつひとつのほんとうに繊細な動きが要求されました。でも、砂糖をうまく落とせなかったり、かき混ぜ方が今いちだったりして、2回くらいNGを出しました。

 そうしたら、監督に『ちょっとこっちに来て』と呼ばれ、『自分が代わりにやるから』とおっしゃって、監督がかき混ぜるシーンの手の動きをやったんです。ところが、どうも手が震えていたようで、うまくコントロールができてなくて、私から見るとぜんぜんいいかき混ぜ方じゃなかったんです。『監督、それじゃだめですよ。やっぱり自分がやります。』と言うと、監督は照れくさそうに引き下がって私と交代しました。

 自分でやってみたら今度はうまくいき、OKも出たので、当然それが使われると思っていたのですが、できあがったフィルムを見たら、私の手ではなくて監督の手になっていたんです。(笑)あの時『監督のかき混ぜ方は、あまりよくなかったと思うのですが、なぜ使ったんですか?』と尋いたら、どうも監督は、せめて手だけでも映画の中に出演したかったようです。」(場内笑い)

 キム「編集する時に、その手がどちらの手か自分でもよくわからなかったんです。手だけを見て、かわいらしい手だから(ここでビョンホン、大笑い)使いましたが、今となってはちょっと失敗したなと思っています。(日本語で)ゴメンナサイ。」(場内爆笑)

 最後は、ネット募集で選ばれたファンからの質問でした。

●『甘い人生』のソヌのように、心の奥底に潜む思いに動かされ、思いも寄らない行動をとったことがありますか?

 ビョンホン「心の揺れとか心が動くというのは、つまり選択だと思っています。人生というのは何かの選択の連続で、常に毎時間、何かを選択しながら私たちは生きているのではないでしょうか? もちろん、その中には大小様々な選択があるでしょうし、人生に大きな影響を与えることもあると思います。それは私に限らず、ここにいらっしゃる皆さんも常に何かを選択して、ここにいらっしゃるのだと思います。私は俳優という人生を選んだ訳で、これも一つの運命かもしれません。

 そもそも、私が俳優になったきっかけは、大学1年の学業を終え、休学して軍隊に入るための願書を提出しようとしていた時に、母の友人が俳優試験を受けてみないかと、かなり強引に進めてきたのです。母の友人がそのように進めなければ、今頃どこで何をしていたかなあ?と考えることがよくあります。」

 司会「これから映画をご覧になるファンの皆さんへ、メッセージをお願いします。」

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夜のプレミア試写会にて
 ビョンホン「この映画はどちらかというと、ドラマチックな展開や俳優たちの熱演もさることながら、とても印象的な映像が、多くの皆さんの心に残る映画だと思います。観終わった後で、映画の感情ラインを思い出すと、とても心が締めつけられるような、後で思い返せば思い返すほど、時間が経つほど、心に残るような映画だと思いますし、私も監督もそういう作品になって欲しいという気持ちでこの映画を作りました。なので、たくさんの観客の方に、そのようにご覧になっていただけたらうれしく思います。」
 ファンの皆さんならご存じのように、ついついお話が長くなりがちなビョンホン氏。今回は監督もそうでしたが、その分たっぷりと語ってくれました。映画の公開は23日から、写真展は24日まで、新宿伊勢丹本館の屋上わかばの広場で開催中です。(札幌では5月に開催予定。)体当たりの演技が話題を呼んだイ・ビョンホンの役者魂と、キム・ジウン監督ならではのこだわりが感じられる『甘い人生』。脇を固める個性的な役者たちの演技にも注目しつつ、美しい映像を堪能しましょう。


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更新日:2005.4.22
●back numbers

記者会見の表記
司会・質問者
ビョンホン(イ・ビョンホン)
キム(キム・ジウン)
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●関連サイト
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「甘い人生」韓国公式サイト
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