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ASICRO FOCUS file no.145

新進作家の多様な作品が集った東京フィルメックス
東京Filmex

ブンミおじさん

詩

上:『ブンミおじさんの森』アピチャッポン・ウィーラセタクン監督
下:『詩』イ・チャンドン監督

 昨年は10周年という節目の年を迎え、第11回の今年から新たなスタートをきった東京フィルメックス。今年の特徴は、東京フィルメックスがこれまでに育てて来た常連監督の他に、新たな作家たちの作品も加わって多様性が増していること。多様性という意味では、国を超えた作品作りも顕著になっているようです。

 特別招待作品をみてみると、オープニングで上映される『ブンミおじさんの森』(今年のカンヌ映画祭でパルムドールを受賞)はタイの監督が多国籍な支援を得て製作された作品。常連ジャ・ジャンクー監督はオランダの支援、ドキュメンタリー作家のワン・ビン監督はフランス資本で初の長編映画を完成させています。

 さらに、イランのアッバス・キアロスタミ監督はフランス・イタリア合作作品で登場。濱口竜介監督の『The Depths』はキム・ミンジュンが主演の日韓合作作品と、映画の世界はますます垣根を超えていきそうです。クロージングを飾るのは、カンヌ映画祭で脚本賞を受賞したイ・チャンドン監督の『詩』。韓国国内でも大鐘賞や韓国映画評論家協会賞など、多数の作品賞に輝いている注目作です。


アピチャッポン・ウィーラセタクン監督ニン・イン

左:アピチャッポン・ウィーラセタクン監督
右:ニン・イン監督

 『ブリスフリー・ユアーズ』から『ブンミおじさんの森』まで、世界の映画祭での活躍が続いているアピチャッポン・ウィーラセタクン監督ですが、今年は国際審査員も兼ねて作品と共に来日。また『北京好日』をはじめとする北京三部作で知られる中国のニン・イン監督も審査員として来日します。審査委員長をつとめるのはベルリン映画祭のフォーラム部門創設者、ウルリッヒ・グレゴール氏。日本からは脚本家の白鳥あかね氏、さらに香港からは香港国際映画祭ディレクターのリー・チョクトー氏が来日予定です。

海上伝奇

『海上伝奇』ジャ・ジャンクー監督(こちらは特別招待作品)
 コンペティション作品の方はというと、こちらも多様な作品が揃いました。多様性という意味ではまさに3つの文化圏が混在するマレーシアのタン・チュイムイ監督の新作『夏のない年』は気になる作品。こちらは、東京国際映画祭でもお馴染みのピート・テオがゲスト来日予定。人気の香港作品では、ジョニー・トー監督以降、昨年のソイ・チェン監督に続いて今年はダンテ・ラム監督が登場。ニック・チョンを金像奨の主演男優賞に輝かせた『証人』(未)の続編『密告者』(原題『綫人』)でやって来ます。共演はニコラス・ツェー。台湾から参加したグイ・ルンメイが香港映画ではどんな役柄を演じているのかも注目されます。

密告者

『密告者』ダンテ・ラム監督
 中国映画からは、今年も興味深い題材を描いたドキュメンタリータッチの作品と、異文化によるドラマを描くユニークな作品が上映予定。次々と新たな才能が誕生している韓国からは、来年公開が決まっている怪作『ビー・デビル』(こちらも数々の賞を受賞中)と、キム兄弟による無気味な作品が参加しています。金馬奨(11/20)の結果が気になるチャン・ツォーチ監督の『愛が訪れる時』では、ゲストが大挙して来日予定。こちらも上映が楽しみな作品です。今年は来日ゲストによるトークショーなどのイベントが少ないのがちょっとさびしいですが、その分、作品をしっかりと堪能しましょう。

■ラインナップの見方とご注意
*上映会場は会場別に色分けされています。時間は上映開始時間です。
T印はゲストによるティーチ・イン、A印は舞台挨拶の予定がある回。(ゲスト情報は変更の可能性があります。)
*最新情報については公式サイトをこまめにチェックしてください。

●特別招待作品(アジア関連作品)

ブンミおじさんの森 ブンミおじさんの森
Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives
(10年/タイ・英・独・仏・西/114分)
監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン
ジェンは余命わずかなブンミから死後の農園の管理を託される。カンヌ映画祭パルム・ドール受賞。(*2011年公開予定)
20日:TKF 14:00T
G:アピチャッポン・
  ウィーラセタクン

詩
Poetry(10年/韓国/139分)
監督:イ・チャンドン
主演:ユン・ジョンヒ、キム・ヒラ
詩を学びながら孫と静かに暮らす老女の物語。カンヌ映画祭脚本賞他、韓国でも数々の作品賞を受賞。(*2011年公開予定)
28日:YAH 17:10T
G:イ・チャンドン

トスカーナの贋作 トスカーナの贋作
Certified Copy(10年/仏・伊/106分)
監督:アッバス・キアロスタミ
出演:ジュリエット・ビノシュ
南トスカーナの小さな村で講演を終えたイギリス人作家とギャラリー経営者のフランス人女性との恋。
23日:YAH 15:20T
G:アッバス・キアロス
  タミ

海上伝奇 海上伝奇
海上伝奇/I Wish I Knew
(10年/中国・蘭/118分)
監督:ジャ・ジャンクー
出演:チャオ・タオ、ホウ・シャオシェン
18人の人物への取材で上海の近代史を振り返るドキュメンタリー。
20日:TKF 18:30
22日:YAH 11:40

The Depths The Depths
The Depths(10年/日・韓/121分)
監督:濱口竜介
出演:キム・ミンジュン、石田法嗣
写真家ペファンは、偶然出会った若者リュウに魅せられる。『チョルラの詩』のキム・ミンジュンと『カナリア』の石田法嗣が共演。
24日:YAH 15:20T
G:濱口竜介
  石田法嗣 (男優)
  村上淳 (男優)

溝
The Ditch(10年/仏/109分)
監督:ワン・ビン
『鉄西区』のドキュメンタリー作家ワン・ビン初の長編劇映画。1950年代末、砂漠地帯の労働キャンプに送られた人々の姿を描く。ヴェネチア映画祭で上映。
21日:TCN 21:15
22日:YAH 15:00

●コンペティション作品

ハンター ハンター
Shekarchi/The Hunter
(10年/イラン・独/92分)
監督:ラフィ・ピッツ
選挙を控えたテヘランで、発砲事件が起こる。事件によって妻を失い、娘が行方不明になった男がとった行動とは?
25日:YAH 12:50
26日:YAH 15:30T

G:ラフィ・ピッツ

夏のない年 夏のない年
Year Without A Summer
(10年/マレーシア/87分)
監督:タン・チュイムイ
30年ぶりに故郷の村に戻った人気歌手のアザムは、少年時代の親友とその妻とともに、ウラ島に夜釣りに出かけるが…。
21日:YAH 15:40T
G:ピート・テオ(音楽)
24日:YAH 12:20T
G:タン・チュイムイ
  ピート・テオ(音楽)

密告者 密告者
綫人/The Stool Pigeon(10年/香港/112分)
監督:ダンテ・ラム
出演:ニック・チョン、ニコラス・ツェー、グイ・ルンメイ
密告者に瀕死の重傷を負わせた捜査官が、再び密告者を使った捜査を命じられる。
25日:YAH 18:30
26日:YAH 21:15

独身男 独身男
光棍児/Single Man(10年/中国/94分)
監督:ハオ・ジェ
中国河北省の山間の村を舞台に、数人の年老いた独身男たちの奇妙な日常生活をドキュメンタリー・タッチで描く。北京電影学院を卒業したハオ・ジェの監督デビュー作。
24日:TCN 21:15
25日:YAH 15:40T
G:ハオ・ジェ
  チャン・イェラン
  (女優)
  ケビン・クー(P)

トーマス、マオ トーマス、マオ
小東西/Thomas Mao(10年/中国/77分)
監督:チュウ・ウェン
英語しか話せないトーマスと、中国語しか話せないマオ。内モンゴルで出会った二人だが、噛み合わない会話のため、事態は意外な方向に展開する。
22日:TCN 21:15
23日:YAH 10:00T
G:チュウ・ウェン
  ジン・ズー(女優)

ビー・デビル ビー・デビル
キム・ボクナム殺人事件の顛末/Bedeviled
(10年/韓国/115分)
監督:チャン・チョルス
休暇を取ったへウォンは幼い頃暮らした無島(ムドゥ)を訪れるが、幼馴染みのボクナムは夫から虐待を受け、脱出しようとしていた。
23日:YAH 18:30T
G:チャン・チョルス
  キム・ギョンエ(女優)
  ハン・マンテグ(P)

アンチ・ガス・スキン アンチ・ガス・スキン
防毒皮/Anti Gas Skin(10年/韓国/123分)
監督:キム・ゴク、キム・ソン
韓国映画界の恐るべき子供たち・キム兄弟の最新作。ガスマスクをつけた連続殺人鬼の恐怖に怯えるソウルを舞台に4人の登場人物の行動を追いつつ、韓国の社会問題に鋭く切む。
22日:YAH 18:20T
23日:TCN 21:15
G:キム・ソン

愛が訪れる時 愛が訪れる時
當愛來的時候/When Love Comes
(10年/台湾/108分)
監督:チャン・ツォーチ
出演:リー・イージェ、ガオ・モンジェ
台北を舞台に、大家族の複雑な人間関係の中で悩みながら生きるヒロインを力強く描く。
20日:TCN 21:15
26日:YAH 18:30T
G:チャン・ツォーチ
  リー・イージェ(女優)
  ガオ・モンジェ(男優)
  リー・ピンイン(女優)

ふゆの獣 ふゆの獣
Love Addiction(10年/日本/92分)
監督:内田伸輝
主演:加藤めぐみ、佐藤博行
内田伸輝監督の長編第3作。同じ職場で働く4人の男女が、それぞれに惹かれあい激しくぶつかっていく。
25日:TCN 21:15
27日:YAH 11:10AT
G:内田伸輝(AT)
  加藤めぐみ(女優/A)
  佐藤博行(男優/A)
  高木公介(男優/A)
  前川桃子(女優/A)

Peace Peace
Peace(10年/日・米/75分)
監督:想田和弘
想田和弘監督の「観察映画」最新作。福祉車両の運転を行っている柏木寿夫と、NPOを運営している妻の廣子。何気ない日常の描写から様々なテーマが浮かび上がる。
23日:YAH 12:40T
G:想田和弘

東京フィルメックス 200920082007200620052004
更新日:2010.11.28
●back numbers

■会場リスト

TKF:東京国際フォーラム
YAH:有楽町朝日ホール
TCN:TOHO シネマズ日劇


■チケット情報(前売18日迄!)

東京国際フォーラム ホールC
各回入替制・全席指定
前売1回券1300円
当日券(指定席)
一般/1700円
学生・サポーター会員/
1300円(学生証・会員証提示)
*13時20分前よりその日の2回分を発売。
有楽町朝日ホール
各回入替制・全席指定
前売1回券1300円
*舞台前/前方/中央/後方のいずれかを選んでご購入頂けます。
平日昼間3回券3300円
当日券(指定席)
一般/1700円
学生・サポーター会員/
1300円(学生証・会員証提示)
*1回目開場40分前よりその日の全上映回分を発売。

TOHOシネマズ日劇
入替制・指定席
前売1回券1300円
当日券(指定席)
一般/1700円
学生/1300円 (学生証提示)
*有楽町マリオン阪急側1Fチケットカウンターにて各日オープン時より発売。
●発売期間:11/3-18
場所:チケットぴあ各店舗
   サークルKサンクス
●電話予約:
0570-22-9999
チケットぴあ(24時間)
●オンライン購入
チケットぴあ(24時間)
*3回券は16日で終了
その他の特集上映
アモス・ギタイ監督特集
〜越えて行く映画


・エステル(85)
・ベルリン・エルサレム(89)
・ゴーレム、さまえる魂(91) 会場:有楽町朝日ホール

ゴールデン・クラシック1950
第一部「松竹黄金期の三大巨匠」


●渋谷実監督作品
・本日休診(52)
・現代人(52)
・正義派(57)
・悪女の季節(58)
・もず(61)
・好人日和(61)
・酔っぱらい天国(62)
・大根と人参(65)

●木下惠介監督作品
・カルメン故郷に帰る(51)
・カルメン純情す(52)
・肖像(48)

●小津安二郎監督作品
・東京物語(53)
・晩春(49)
・麦秋(51)

会場:東劇
*フィルメックス終了後に第二部「女優王国−日本が恋する女優たち」も上映予定(11/29-12/10)
トークイベント
そうだったのか、
東京フィルメックス

10/28(19:00-20:30)
G:市山尚三(Filmex)
  林加奈子(Filmex)
  森田聖美(聞き手)

フィルメックスが
待ち遠しい!(Vol.1)

11/10(19:00-20:30)
G:西島秀俊(俳優)
  アミール・ナデリ(監督)
  林加奈子(聞き手)

フィルメックスが
待ち遠しい!(Vol.2)

11/17(19:00-20:30)
G:行定勲(監督)
  市山尚三(聞き手)

会場:丸の内カフェ(入場無料)
子ども映画ワークショップ
第四回 映画の時間

11/23(火・祝)

映画をみる(9:00-)
・プリンセスと魔法のキス
会場:銀座テアトルシネマ
前売:大人800円/子ども500円
当日:大人1000円/子ども700円

映画を知る(11:00-)
・講義&ワークショップ
 特別講師:宇井孝司
 (アニメーション演出家)
会場:丸の内カフェ
*定員制・子どものみ(完売)

▼詳細は公式サイト
●お問合せ
東京フィルメックス事務局
TEL/03-3560-6394
公式サイト
受賞結果
●最優秀作品賞
ふゆの獣
監督:内田伸輝
●審査員特別賞
(コダックVISIONアワード)
独身男
監督:ハオ・ジェ
●観客賞
Peace
監督:想田和弘